近年、インドの存在感がますます高まっています。

人口は14億人を超え、世界最多。国際通貨基金(IMF)の推計では、2025年中に名目GDPが日本を抜き、世界第4位になる見通しです。日本の国際的な影響力が相対的に低下するなか、投資先としても成長著しいインドが注目を集めています。

そこで今回は、インドを知るうえで欠かせないカースト制度・人口・宗教などについて、第一生命経済研究所 経済調査部主席エコノミストの西濵徹氏に解説してもらいます。(全3回の2回目)

●第1回:インドはカーストを乗り越えて「IT大国」になったは幻想? 差別・就職・結婚と根深い関係

※本稿は、西濵徹著『インドは中国を超えるのか』(ワニブックスPLUS新書)より、一部を抜粋・再編集したものです。

人口増のインドでも所得水準の高い地域は…

人口減少が顕在化しつつある中国に対し、インドは平均年齢が28歳台であるなど総人口に占める若年層の割合が比較的高く、人口ピラミッドも三角形に近い形状を維持しています。こうした人口構成も影響して足下においても人口増加の動きが続いているほか、5年ごとに実施される総選挙においては有権者数が大幅に増加する動きも確認されています。

 

さらに、国連による最新の人口推計によればインドの人口は2064年に17億人弱でピークを迎えるとしており、つまり向こう40年近くに亘って人口増加が続くと見込まれています。よって、インドの人口を巡っては減少ペースが加速していくと見込まれる中国とは対照的な状況にあると捉えられます。

しかし、インドにおいても州ごとの出生動向については異なる見え方が生まれていることに注意する必要があります。インド全土における合計特殊出生率は2.0近くと人口増加が期待される水準を維持しているものの、所得水準が相対的に高い地域においては近年出生率の低下が顕著で、所得水準が低い地域における出生率の高さが全体的な水準を押し上げている動きが確認されています。