確かにバフェット氏の遺言に「S&P500」は登場するが…その真意は

もうひとつ、バフェット氏のS&P500関連ETFの売却に際して多く寄せられた声が、「『S&P500のような低コストインデックスファンドに投資するのが最良の手段だ』と言っていたのに、なぜ全売却したの?」ということでした。

言うまでもなく、バークシャー・ハサウェイは銘柄を集中投資させるアクティブ運用です。バフェット氏は、このような名言を残しています。

「分散は無知に対するリスクヘッジ」

前述したように、バークシャー・ハサウェイは米国株で2600億ドル超もの資産規模を持っていながら、ポートフォリオに組み入れられている銘柄数は40銘柄にも達していません。2024年第4四半期のポートフォリオで一番上位はアップルですが、その保有割合は全体の28.12%にも達しています。

そうであるにもかかわらず、バフェット氏が「S&P500のような低コストインデックスファンドに投資するのが最良の手段だ」と言ったのは、自分が運用することを前提にしていないからです。

そもそもバフェット氏がS&P500などのインデックス運用を最良と言ったのは、バフェット氏が毎年、株主総会の前にリリースする「株主への手紙」の2013年版で、自分の妻の相続に関する遺言として「現金の10%を米国政府短期証券で、残り90%はS&P500のインデックスファンドで運用するように指示しました。こうした方針をとることにより、高額な手数料を取る運用者を抱えている他の投資家よりも、長期では優れた結果を残せると確信します」と書いたからです。

それから12年。幸いなことに、今のところこの遺言は執行されていませんが、この遺言に書かれた内容から、いつの間にか「バフェット氏はS&P500の運用を最良としている」という解釈が、個人の間に広まっていったように思われます。

しかし「S&P500が最良の選択だ」と言ったのは、あくまでも妻にあてた遺言だからです。

いくらバフェット氏の妻だからといっても、銘柄選別でバフェット氏と同等か、それ以上の運用パフォーマンスを出せる可能性は極めて低いと考えられます。それはバフェット氏も思っていることでしょう。だから、銘柄を選ぶ目を持っていない妻に対して、S&P500への長期投資を遺言したのです。そうすれば「少なくとも大きく外すことはない」というわけです。