バフェット氏がS&P500ETFを売却→米国株の未来が暗いから!?と一部で騒ぎに…
ウォーレン・バフェット氏が率いる投資会社、バークシャー・ハサウェイが、保有しているS&P500連動のETFを売却し、一部で話題になっています。
多くの反応は、「『S&P500のような低コストインデックスファンドに投資するのが最良の手段だ』と言っていたのに、なぜ全売却したの?」、「それって米国株の先行きに対する不安のあらわれなの?」など、怨嗟(えんさ)と不安の混じったものになっています。
では、ウォーレン・バフェット氏のS&P500全売却は、個人を裏切る行為だったのでしょうか。また、それはバフェット氏が米国株式市場の先行きに対して、期待を持てなくなったことの現れなのでしょうか。ちょっと考えてみたいと思います。
まず、バフェット氏が米国株式市場の先行きに対して期待を持てなくなったから、S&P500のETFを売却したという見方は、おそらく間違っています。
バークシャー・ハサウェイが米証券取引委員会(SEC)に提出している、上場株式のポートフォリオを報告する「フォーム13F」によると、確かに昨年9月末時点で組み入れられていた2本のS&P500連動ETFである、「SPDR S&P500 ETF TR」と「VANGURD INDEX FDS」の名前が、2024年12月末時点の組入銘柄には見当たりません。つまり、2024年9月末から12月末にかけて、上記2本のETFを全売却したことになります。
2024年9月末時点の、両ETFの時価総額を見ると、「SPDR S&P500 ETF TR」が2266万ドル、「VANGURD INDEX FDS」が2268万ドルです。
ただ、同時点におけるバークシャー・ハサウェイの米国株ポートフォリオの時価総額合計は約2660億ドルなので、それぞれの投資比率は約0.0085%に過ぎません。つまり両者を合わせたとしても、9月末時点の時価総額全体に占める割合は、約0.017%でしかないのです。
わずか0.017%に過ぎないものを売却したからといって、「米国株式市場の先行き期待が後退したと判断するのは、いささか早計に過ぎるというものでしょう。もしバフェット氏が暴落を察知してポートフォリオの現金比率を上げようとしているのであれば、他の銘柄も大幅に売ってくるはずです。しかし、他に売ったのはアルタ・ビューティー(ULTA)という銘柄のみです。
これは勝手な推測ですが、バークシャー・ハサウェイのポートフォリオに「SPDR S&P500 ETF TR」と「VANGURD INDEX FDS」を組み入れたのは、当時、投資比率を増やす、もしくは投資対象銘柄を増やすという判断が付きにくい情勢下で、米国株式市場の上昇に対してポートフォリオのパフォーマンスを劣後させないようにするための次善の策だった、と考えることもできます。
もしそうだとすると、今回、2本のETFを売却したのは、よりコミットしたい個別銘柄が現れたからと考えることもできそうです。その点でも、S&P500関連ETFをポートフォリオから外したからといって、単純にマーケットの先行きに不安感を抱いての投資判断ではないということになります。