証券会社や銀行といった従来の金融機関とは異なり、中立的な立場から金融商品の提案、アドバイスを行う存在として、急速に注目が高まっているIFA(Independent Financial Advisor:独立系ファイナンシャルアドバイザー)。特に現在のような不安定な相場環境に直面すると、自らの資産運用の手法に対して客観的なアドバイスがほしいという人は増えてくるはずで、IFAの存在感はさらに増していくことになるかもしれません。

事実、ここ数年はIFAを目指す人も増えてきていますが、その中には、大手証券会社や大手銀行などに勤務していた人も少なくないようです。

一方で、IFA法人はまだまだ小規模のところが多く、そうした大手金融機関と比較すれば、安定性や福利厚生面で見劣りするのは否めないでしょう。かつては腕に覚えのある営業担当者がIFAに転身し、完全歩合制で高収入を目指すというケースも多かったものの、足元で増えてきているのはむしろ固定給のアドバイザーで、転職によって収入が減少してしまうことも多いそう。

彼らはなぜ、恵まれた環境を捨ててまでIFAを目指すのか。その動機にこそ、IFAがいま注目を浴びている理由もあるのかもしれません。

そこで今回は、有力IFA法人Fanにご協力いただき、現役IFAの生の声を紹介します。

思い描いていたのとは全く違った金融機関の実情

まずは「準大手証券会社に6年間在籍していた」というFan名古屋支店の室田健次さん。

室田 健次さん

「学生時代に多くの人の役に立つ仕事がしたいという漠然とした夢を抱き、さまざまな職業を見ていく中で、人々にとって生涯必要なモノである『お金』は人生と切り離せない存在であることから、徐々に金融に対して興味を持ち始めました。自分自身、投資に対する知識が全くなかったこともあり、世界経済を学べる場で、お客さまのお金にまつわる課題を解決できる証券会社へ入社を決めました」。

実際に入社してみると、「給与面に不満はなく、人間関係も非常に良好でした」と振り返る室田さん。しかし、金融機関の内情は、自身が思い描いていた色とは全く違っていたのも確かでした。「転職しようと思ったきっかけは、日々の業務を行う中でお客さまのニーズに100%応えることが難しいと感じたからです」。

では、その理由は何だったのか。「主な理由は2つあり、1つ目は特定商品の販売ノルマです」と室田さん。「前職では毎月、新しい特定商品の販売額、手数料のノルマが設定されていました。もちろん、ノルマ自体が悪いというわけではありません。しかし、毎月新しい特定の商品を販売しなければいけないため、お客さまのニーズとの間にズレが生じることが多々ありました。その結果、顧客満足度が低下する傾向にあったのです」。

顧客の課題を最優先に考える営業ではなく、会社としての、個人としての成績を最優先に考えざるを得ない仕組み。そこに室田さんは疑問を感じていたそうです。