◆飛躍する「米国高配当株」と「宇宙関連株」
12月20日に新規設定されたばかりの「SBI・S・米国高配当株式ファンド(年4回決算型)」が資金流入額727億円で、ランキングの第5位になった。同ファンドは米国の配当利回りが高い100銘柄で構成される指数である「ダウ・ジョーンズUSディビデンド100インデックス」への連動を目指すETF「SCHD」に投資することで、米国株式の値上がり益と配当の両面のメリットを享受することをめざす。同様の仕組みである「楽天・高配当株式・米国ファンド(四半期決算型)」は、一足早く2024年9月18日に設定され、年末までの3カ月程度の期間に純資産残高が1000億円を超える人気ファンドになっている。「SBI・S・米国高配当株式ファンド(年4回決算型)」もSBI証券の単独募集による新規設定だったにもかかわらず、設定から1カ月足らずの1月16日には純資産額が957億円と1000億円の大台に届きそうだ。
高配当株式は、これまで株式市場の人気を集めてきた「マグニフィセント・セブン」といわれる大型ハイテク株と違って、成熟して安定的な業績をあげている企業群が多い。実際に、同ファンドが投資する高配当株ETF「SCHD」の組み入れ上位銘柄は、医療関連の「ファイザー」、エネルギーの「シェブロン」、IT・通信の「シスコシステムズ」、飲料会社の「コカ・コーラ」、医療関係の「アッヴィ(ABBV)」などとなっている。「S&P500」の組み入れ上位である「アップル」「エヌビディア」「マイクロソフト」などとは大きく異なる銘柄群だ。
9月18日に設定された「楽天・高配当株式・米国ファンド(四半期決算型)」の基準価額は約4カ月経った1月16日時点で1万954円とおおむね10%上昇している。この期間、「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」の基準価額の上昇率は18.55%であり、その水準には届かないものの、配当を得ながら着実に資産の増大を図ることを目的としたファンドという異なる性格をもっているだけに、価格上昇率だけが評価の対象ではない。今後、それぞれのファンドで分配金が払い出されるようになると、そのファンドの価値もより明確になってくるだろう。今後が楽しみなファンドだ。
また、第10位にジャンプアップした「東京海上・宇宙関連株式ファンド(為替ヘッジなし)」も面白い存在だ。同ファンドの設定は2018年9月12日で決して新しいファンドではない。注目が高まったのは米国でトランプ氏の優勢が伝えられるようになった2024年10月以降のことだ。9月末時点の基準価額は1万8621円だったが、10月末には2万556円に上昇し、トランプ氏が当選を確実にした11月11日には2万1824円。そして、11月14日には2万2546円の高値を付ける。その後も高値を維持し、1月16日時点の基準価額は2万2770円だ。
昨年9月末から1月16日までの同ファンドの上昇率は22.28%で、この期間の「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」の上昇率14.03%を上回っている。宇宙関連産業の育成は第1次トランプ政権の時にも積極的に取り組まれた政策の1つで、今回は政権の主要メンバーに米国の新興宇宙開発会社であるスペースXのCEOであるイーロン・マスク氏も加わっている。宇宙関連産業は、ロケットの小型化が進むなど打ち上げの効率化が進展したことで、いよいよ様々な目的で宇宙空間を活用する時代を迎えている。これまで株式市場の大きな注目テーマであった「AI(人工知能)」や「半導体」に並ぶような注目産業として定着できるのか、今後の動きが注目される。
執筆/ライター・記者 徳永 浩