投資信託の選び方を調べると、ときどき「純資産総額が大きい銘柄を選ぶ」と解説する記事に出会います。しかし、運用の優劣は純資産総額で単純に決まりません。また初めて資産運用に取り組む場合、そもそも純資産総額の意味がわからないというケース想定されます。
今回は純資産総額に焦点を当ててみましょう。純資産総額の意味と、純資産総額に関するよくある誤解について紹介します。
純資産総額は投資家に帰属する部分 運用規模の大きさを表す
純資産総額は、投資信託の運用規模を測る尺度としてよく利用されます。純資産総額が大きいほど、その投資信託は多くの金額を運用しているといえます。
より正確に説明すれば、純資産総額は投資家に帰属する金額を指す言葉です。投資信託が保有する株式や債券といった有価証券の時価評価額と、利息や配当金などの収入を足し合わせた金額から、解約金や信託報酬といった未払いの負債を控除した金額が純資産総額となります。
つまり、資産から将来に発生する必要経費を差し引き、実質的に投資家の手元に残る金額の総計が時価総額です。
・資産総額:保有証券の時価評価額+利息や配当金などの収入
・純資産総額:資産総額-信託報酬などの負債
ちなみに、投資信託の値段である「基準価額」は、純資産総額を総口数で割って算出されます。このことから、純資産総額は基準価額×総口数と表すこともできます。
「純資産総額は多ければ多いほど良い」の誤解
冒頭でお伝えしたとおり、純資産総額はよく「大きいほどよい」と解説されます。その根拠として「純資産総額が大きいほど運用効率が高まる」と説明されることが多いようです。
しかし、これはやや短絡的かもしれません。純資産総額の適切な水準は、投資対象や運用の方法などで変わります。単純な大小をもって運用の優劣を説明することは困難です。
例えば、投資信託は信託金の限度額を低く設定している場合があります。運用効率が純資産総額に比例するなら、できるだけ資金を集めればいいはずです。しかし、実際には一定額まで資金が集まると、申し込みの受け付けを停止する投資信託が少なくありません。
これは市場規模が比較的小さい資産で運用される銘柄などで見られます。中小型の株式で運用されるものや、特定の銘柄群へ集中投資するファンドなどが代表的です。
投資対象の市場規模が小さいと、そこへ投下できる資金も限定されます。これを超える額の投資は、かえって運用効率が低下してしまう懸念があります。そこで信託金に上限を設け、過度に資金が集まらないようにしているのです。