いつか訪れるのに、ついつい話し合いを先延ばしにしまいがちな「相続」。相続問題に詳しい弁護士の古山隼也氏は「相続には予想外のトラブルがつきもの」といいます。相続をきっかけに家族がバラバラになる「争族」にならないためにも、今回は相続に関するよくある疑問を、Q&A形式で古山氏に解説してもらいます。(全4回の3回目)
●第2回:遺言書に「すべて長女に相続させる」…他の相続人に遺産を渡さなくても法律上は有効なの?
※本稿は、古山隼也著『弁護士だからわかる!できる! あんしん相続 手続きの「めんどくさい」「わからない」「ストレス」が消える!』(Gakken)の一部を抜粋・再編集したものです。
家族信託で財産を管理したい
Q. 最近よく聞く「家族信託」とは、どういうことですか?
A. 財産の管理や処分を家族に任せるしくみです。
家族信託とは、家族の財産の管理・処分や遺産の承継のために信託を使用することを指します。
委託者の財産を受託者に移転させ、委託者の設定した目的に沿って、受託者が受益者(委託者)のために、財産の管理・処分を行います。
家族信託の例としては、例えば、高齢者の財産保護を目的とする次のような例があります。
例:収益物件を所有している父親が、認知症となって物件の管理ができなくなる、詐欺被害に遭う、などの将来起こりうることに備えて、娘に収益物件を信託財産として信託を設定する。娘は収益物件を管理して、賃料から必要に応じてリフォームなど収益確保のための投資費用や父親の生活費などを支払う。