「元本保全」が忘れ去られた3つの理由

①金利のない世界では、元本を保全しながら儲ける投資が難しい

金利があれば、銀行預金や国債の満期保有など元本の毀損(きそん)リスクがほぼない投資でも金利が得られるが、金利がない世界ではリターンがない。日本でも以前は銀行に定期預金をしておけば満期時に十分なリターンが得られる時代があったが、現役世代はその恩恵を受けたことがない。

その結果、リターンを得るにはリスクを負うのは当たり前で、投資において元本保全などは不可能と考えるようになったのであろう。

②金利のない世界では、金余りによりあらゆる投資が儲かりやすい

世の中の金利を決めるのは中央銀行だ(正確には最も基本となる政策金利を決めるのは中央銀行で、それに世の中のあらゆる金利が影響を受ける)。金利がないのは、中央銀行が景気を刺激したいため、もしくはデフレを阻止したいために金利をなくしているわけだ。

その結果、市中にはお金があふれ、あらゆる資産の価値が上がりやすい。つまり金利のない世界では、株式や不動産を含め本来リスクの高い投資でも儲かりやすく、元本保全という考えは忘れられてしまうのであろう。

③「長期投資」を錦の御旗に短期的な元本保全が軽視されている

上記のような環境の中、個人の資産運用にも超長期の投資を前提にした「積立投資」や「現代ポートフォリオ理論」による分散投資という考え方が浸透しているようだ。

後者は現代といっても70年前にでき上がった理論だが、生命保険や年金など数十年間という超長期で運用する投資家が上場株式など値動きの激しいアセットも投資対象とする上でベースとしている分散投資の考え方で、ある程度短期的なリスクには目をつぶっている。

それでも機関投資家はリスクを極力抑えるためにもオルタナティブ投資にもかなり配分している(個人には難しい)ことは知っておくべきだし、そもそも個人投資の時間軸に合うかどうかという問題もある。