衆院選で自公過半数割れ…注目を浴びる課税最低限「103万円の壁」

さて、令和7年度税制改正において、政局のネタにもなっているのが「103万円の壁」問題でしょう。

先に行われた衆議院選挙において、465議席のうち与党の自民党が191議席、公明党が24議席の計215議席しか獲得できず、過半数の233議席を下回る結果に終わりました。与党が過半数を割り込んだのは、民主党政権が誕生した2009年以来のことになります。

つまり、与党である自民・公明両党としては、政策、法案を通すにあたって、野党の協力が必要になりますし、そもそも衆院解散・総選挙の後に新しい首相を選ぶために開かれる特別国会において、石破首相が第103代目の内閣総理大臣に選ばれるためには、衆参両院において投票総数の過半数を獲得しなければなりません。

しかし、すでに衆議院においては与党の議席数が過半数に達していませんから、石破首相が第103代目内閣総理大臣に指名されるためには、野党の協力がどうしても必要になります。その協力先として注目されているのが、国民民主党です。

今回の衆議院選挙において、国民民主党は議席数を7議席から28議席に伸ばしました。与党が獲得している215議席に、国民民主党の28議席が加われば243議席になり、過半数を上回ることになります。結果的に石破首相は無事、第103代内閣総理大臣の座に居続けられますし、今後の法案も通しやすくなります。

ただ、国民民主党は与党との連携をはかるに際して、条件を提示しています。この条件こそが、「103万円の壁」の見直しなのです。

103万円の壁とは、給与所得が103万円を超えると、バイト代やパート代に所得税が課せられる年収額を指します。またバイトやパートの年収が103万円を超えた時点で扶養から外れますから、親など扶養者の所得税と住民税が増えることになります。

103万円の根拠は、48万円の基礎控除と、55万円の給与所得控除を合わせた額です。これを178万円に引き上げたいというのが、国民民主党の主張です。国民民主党の選挙公約で打ち出しているだけに、11月9日時点ではこの線を譲れないとするのが、国民民主党のスタンスです。

逆に言えば、与党がこの条件をのまない限り、国民民主党の協力を得ることが出来ず、法案通過に際して、与党はイニシアティブを発揮できなくなります。

ちなみに国民民主党が訴えている、「178万円」という数字の根拠は、東京都の最低賃金が1995年から1.73倍に上昇していることを踏まえての数字です。

では、仮に課税最低限を103万円から178万円に引き上げた場合、どのくらいの減税額になるのでしょうか。大和総研が給与所得に応じての減税額を試算しているので、その数字を挙げてみます。それによると、

年収200万円・・・・・・8万2000円
年収300万円・・・・・・11万3000円
年収500万円・・・・・・13万3000円
年収600万円・・・・・・15万2000円
年収800万円・・・・・・22万8000円
年収1000万円・・・・・・22万8000円

※課税最低限の75万円の引上げに基礎控除の引上げのみで対応した場合の試算
※単身世帯または配偶者控除適用のない共働き世帯(子どもは16歳未満)の給与所得者を想定して試算
※千円未満は四捨五入

ということになっています。つまり課税最低限を引き上げることによる恩恵は現在、103万円の壁を意識して、それを超えない所得の範囲内で働いている人だけでなく、年収の多い人も受けることができるのです。