<前編のあらすじ>

窪田理宇さん(仮名・42歳)の父親は海外で長く単身赴任をしてきた元商社マン。現役時代はビジネスエリートとして忙しい日々を過ごしていましたが、家族との時間も大切にしていたため母親との関係も良好でした。そんな両親は窪田さんにとって「理想の夫婦」そのものでした。

しかし10年前に母親が急逝してしまい、父親は1人暮らしを始めます。最初こそ家にこもりがちでしたが、半年もたつと元気を取り戻し、その様子に窪田さんも安心していました。

しばらく年月がたった頃、兄から窪田さんに電話があり「父親が面識のない女性に3000万円貢いだ」という衝撃的な事実を聞かされます。

●前編:【見知らぬ女性に3000万円送金した父に子ら絶句…元商社勤務の70代男性が起こした人生最大の“不祥事”】

急いで会いに行くと憔悴した父親が…

博多でコンサルの仕事をしている私の元に、兄から「オヤジが国際ロマンス詐欺の被害にあったらしい」という電話が入ったのは2カ月ほど前のことでした。

父は元商社マンで、リタイアしてから11年になります。定年退職して1年もたたないうちに母がくも膜下出血で急死し、以降は都内のマンションで1人暮らしをしていました。

母の死はショックだったようですが、もともと明るく活動的なタイプなのでやがて元気を取り戻し、友人たちとゴルフを楽しんだりしているようでした。炊事や洗濯なども一通りこなせるので、一時は毎週のように様子を見に行っていた私も、遠いことと忙しいことを理由に近年は実家から足が遠ざかっていました。

そんな矢先の詐欺被害。しかも、父のスマホに連絡しても留守番電話につながるばかりだったので、意を決して当日の航空券を購入し、急遽自宅に戻りました。

父は都内の自宅にも不在でした。父から渡されていた家のスペアキーで中に入りイライラしながら待っていると、22時過ぎに疲れた顔の父が帰ってきました。

どうやら警察で事情を聞かれていたようでした。焦燥し切った父は、私の姿を見て思わず涙ぐんでいました。

夕食も取っていなかったようなので、2人でデリバリーの寿司をつまみながら、父に事の顚末(てんまつ)を聞きました。