株主偏重の還元を否定する「五方よし」 それでも配当重視の投資家に選ばれる理由
最後に住友電工の配当政策についても確認しておきましょう。
住友電工は、安定的な配当の維持を基本とし、業績や配当性向、内部留保の水準などから配当金を決定するとしています。「五方よし」を標榜する同社は、ステークホルダー全体を重視する方針で、株主に偏重した還元のあり方には否定的な姿勢をとっています。
とはいえ、住友電工が株主還元に消極的というわけではありません。配当性向はおよそ3割~4割で推移してきました。これは平均的な水準です。2023年度のプライム上場企業(全産業)の配当性向は平均34.17%でした。
【住友電工の配当性向の推移】
・2020年3月期:42.9%(40円)
・2021年3月期:44.3%(32円)
・2022年3月期:40.5%(50円)
・2023年3月期:34.6%(50円)
・2024年3月期:40.1%(77円)
※()は1株あたり配当金
出所:住友電工 ファクトブック
今期(2025年3月期)の配当性向は期首予想時で40.1%を予定しています。1株あたり配当金は、前期より5円少ない72円となる見込みです。
4期ぶりの減配で、かつ株価水準も上昇していますが、足元の予想配当利回りは3.1%前後を維持しています。おおむね過去の実績と同水準で、日経平均株価の予想配当利回り(1.97%)よりも高くなっています(2024年9月30日終値)。
配当性向や配当利回りの水準から、住友電工は配当金にも十分期待できる銘柄です。業績や株価にもよりますが、配当金を重視するなら住友電工は有力な候補となるでしょう。
当面は好調な今期の中間決算が注目を集めそうです。第1四半期の公表時は業績の見通しを引き上げた一方で、予想配当金は据え置いています。中間決算でも好調な進捗が確認されれば、配当金の増額に踏み切るかもしれません。住友電工の中間決算は、例年11月上旬に公表されています。
文/若山卓也(わかやまFPサービス)