米国がいよいよ利下げに。しかも0.5%の引き下げ…

9月18日、米国の中央銀行であるFRB(連邦準備制度理事会)が、政策金利を0.5%引き下げました。これによって米国の政策金利の誘導目標は、4.75%~5%になります。

米国の市中銀行は連邦準備銀行に、預金残高の一定割合を「準備金」として預託することが義務付けられています。この準備金が不足している銀行は、逆に準備金が余っている他の銀行から一時的に資金を借り入れ、準備金を預託します。この貸し借りに適用される金利が、FFレートです。そして連邦準備銀行は、公開市場操作によってFFレートを、FRBが決定した誘導目標に誘導します。

FRBがFFレートの誘導目標を引き上げると、世の中全体が金融引き締めとなり、景気過熱やインフレを抑制しつつ、長期金利を上昇させます。反対にFFレートの誘導目標を引き下げると金融緩和となり、景気を刺激させるのと共に物価下落に歯止めをかけ、長期金利を低下させます。

では、これまでFFレートはどのように推移してきたのでしょうか。FRBが公表している、FF市場における取引金利の加重平均値である実効FFレートで見てみましょう。

極めて長期の推移を見ると、1954年11月の0.83%から1981年1月の19.08%まで、途中の上下動はあるものの、上昇トレンドをたどった後、2014年2月には0.07%まで低下しました。

そして2019年4月には2.42%まで上昇しましたが、新型コロナウイルスの世界的感染拡大によって、2021年5月には0.06%まで低下。2022年3月から徐々に水準を切り上げ始め、2023年8月には5.33%まで上昇しました。

ちなみにFFレートの誘導目標は、2022年3月に0.25%~0.50%に引き上げられた後、10回にわたって引き上げられ、2023年7月に5.25%~5.50%となり、そこから2024年7月まで変わらず、同年9月に4.75%~5.00%へと引き下げられたのです。

このように過去の推移を見ると、今回の利下げは4年半ぶりになります。しかも、FRBが金利の上げ下げをする際には0.25%幅が通常のところを、今回は0.50%幅の利下げでした。これが意味することは何なのでしょうか。

そもそも2022年の春先から、10回にわたってFFレートの誘導目標を引き上げてきたのは、インフレが加速したのに加えて、想定していた以上に景気が強かったからです。

消費者物価指数の前年同月比は、2022年9月に8.2%まで上昇していましたが、2024年7月には2.9%、同年8月には2.5%まで低下してきました。

また、景気の動向に大きく影響する雇用統計の数字を見ると、非農業部門雇用者数の前月比は、2023年1月に51.7万人増と大きく跳ね上がった後は、大体15万人増から30万人増で安定的に推移していたのが、2024年7月は11.4万人増、同年8月は14.2万人増というように、やや低迷してきました。それにともなって失業率も、2024年4月まで3%台だったのが、同年8月には4.2%まで上昇してきています。

米国ではGDPの7割を個人消費が占めるので、雇用情勢が景気に大きく影響するのは言うまでもありません。したがって、雇用情勢にやや陰りが見え、かつ消費者物価指数が落ち着き始めた今が、いよいよ利下げのタイミングということなのでしょう。

マーケットは、今回の利下げを好感しています。たとえばNYダウを見ると、8月30日に4万1585.21ドルをつけて高値を更新した後、9月11日には3万9993.07ドルまで調整しましたが、そこから再び最高値を更新して上昇を続けています。ちなみに9月24日には4万2281.06ドルの高値をつけました。