今回は、北海道の道民性や金融事情について、ごく簡単に解説させていただきます。筆者には、道内に遠戚がいるほか、筆者自身も新卒後に就職した金融機関に在籍中の2012年から2年3か月ほど、北海道に赴任した経験があります。そうしたわずかな接触機会から気付かされた経験も踏まえて、少しだけ北海道のことを紹介させていただければ幸いです。
広大な北海道、話題性にも事欠かず
北海道本島と508の島で構成される北海道の総面積は8万3424㎢に達し、オーストラリア1国の面積に匹敵します。日本の国土に占める割合は22.1%で、東京都の約39.6倍の広さです。
この面積に対する人口は、2023年10月1日時点で509万人となっており、都道府県別では全国第9位の模様です。ひとつ上の順位である第8位は福岡県で、同県の面積は4988㎢と、北海道の6%に過ぎません。従って、こうした数値から導き出される都道府県別人口密度でも、北海道は全国最下位となっています。
そんな北海道ですが、以下に示す政治・芸能面などでは、人口順位以上に高頻度な話題を提供している印象を受けますが、皆さんはいかがでしょうか。
分野 |
道内出身者・事業者[敬称略] |
政治 |
鈴木宗男、高橋はるみ、長谷川岳、堀井学、橋本聖子、和田義明 |
経済 |
JR北海道、ニトリ、ツルハ、道庁保健福祉部、札幌ドーム |
芸能 |
北島三郎、細川たかし、中島みゆき、松山千春、大黒摩季、玉置浩二(安全地帯)、吉田美和(Dreams Come True)、水谷豊、藤本美貴(ミキティー)、TEAM NACKS(森崎博之・安田顕・戸次重幸・大泉洋・音尾琢真)、加藤浩次、紺野あさ美、タカアンドトシ、バービー(フォーリンラブ)、EXIT兼近、大政絢、吉村崇(平成ノブシコブシ)、菊地亜美、カルーセル麻紀 |
出身者の道民性
道内には179の市町村がありますが、あまりに広大なため、たとえ道内出身者であっても、北海道庁の振興局関係者か地図マニアでもない限りは全ての市町村の位置を特定できる人はいません。もちろん札幌・旭川・稚内・函館・釧路など主要都市は在住者に幅広く理解されていますが、その周辺や衛星市町村を含む北海道全体のことを漏れなく理解している道内在住者はほとんどいないのです。従って、ごく一般の道民に「先日××町を訪れた」と知名度の低い町村などを告げても、ピンと来ない反応をされることが珍しくありません。
2021年度末のやや古いデータですが、道内には廃線が続く鉄道の駅もなお447駅残っており、乗合バスの路線㌔数も3万1141㎞、高速道路と自動車専用道のインターチェンジも128あります。筆者は、先に挙げた赴任中、自動車を運転して北海道の外周に近い道路を2周しました。その予定や結果を赴任中の(道内出身・在住の)同僚にした際にも、「稚内はどんなところか知らない」「(根室など)道東には行ったことがない」等の反応が少なくなく、同様の経験を持つ方は皆無だったことを思い出します。全体が観光地である北海道ですが、在住者には、道内観光よりもディズニーランドや海外旅行などを希望する向きが少なくないようです。
冬季の代表的なレジャーであるスキーやスノーボードも「寒いのでやらない」という声が多数を占めていました。沿岸部に住む人が、皆釣りやレジャーボートなどに乗らないのと同じような図式でしょうか。
そんな一方で、道民には、総じて道に対する強い帰属意識が認められました。北海道のことが一番好きなのは、道内出身・在住者と思われ、札幌のデパートなどでも高頻度で「北海道物産展」が開催されていましたが、常に在住者で大賑わいでした。道内出身者が相応の比率を占める各地の大学など高等教育機関も相応の数があり、北海道大学などが教員・研究者の主要な人材供給源となる一面が認められるようです。
就職についても、「できれば自宅通勤圏内で」「それが叶わずともせめて道内で」という声を非常に多く聴きました。先祖は故郷を捨てて文字どおり身を挺して開拓に入植した人が多かったのでしょうが、その子孫には北海道に対するローカル意識が芽生えてしまったようです。テレビを点ければ、北海道に所縁のあるローカルタレントやアナウンサーなどを見ることも珍しくありません。
東京のスーパーマーケットなどでは、「北海道産じゃがいも」などの表示をよく見かけますが、道内では、例え小さな販売所などでも「北海道産」や「じゃがいも」の表示はありません。前者は市町村などの生産地、後者は「きたあかり」「インカのめざめ」「レッドムーン」などの品種が表示されているためです。海産物も同様に、水揚港名が細かく表示されていました。これらの鮮度は総じて高く、それゆえ皆美味でした。
そんな一方で、広い北海道でも全ての農産物が栽培されているわけではなく、例えば静岡や愛媛で生産されるミカンはないため、販売価格は非常に高価です。南国への憧れが強いためか、テレビCMではバナナも流れていました。海産物も同様で、ホッケはフライも含めて幅広く売られていますが、たたきやなめろうだけでなく、生や開きを含めてアジは殆んど売られていませんでした。
このほか、中に餡子が入っていないべこもち、麺をふやかした後に捨てるお湯で溶かすスープの付いた焼きそば弁当、海外からの輸入品もスーパーに数多く並ぶ羊肉などがこよなく愛されています。道内にしかない六花亭の実店舗も、いつも賑わっています。
北海道の生活動線など
地下鉄が広域に敷設された札幌市内を除けば、ほぼ車社会です。札幌市に次ぐ人口を誇る旭川市にも、自動車による通勤顧客などを見越したロードサイド店舗が各幹線道路沿いに広がっています。
このため日本百貨店協会に加盟する百貨店も、2023年1月に帯広市の藤丸が閉店したことから、現在では函館市内の1店舗を除くと、皆札幌駅から大通駅までの間に集中しています。
それ以外の中核都市では、(イトーヨーカドー系の)アリオやイオンなどの全国でよくみられるショッピングモールが相当数あるほか、駅に隣接したファッションビルなどがあります。
北海道のメディア
新聞では北海道新聞(略称“道新”)が最大の占有率を占めており、道東地区では十勝毎日新聞(通称“かちまい”)がそのシェアを凌駕している地域もあります。
確認できた限りでは、道内にはケーブルテレビが14局あるほか、民放では札幌テレビ(日テレ系)・北海道放送(TBS系)・北海道文化放送(フジテレビ系)・北海道テレビ放送(テレビ朝日系)・テレビ北海道(テレ東系)が設置されています。「水曜どうでしょう」「おにぎりあたためますか」「ブギウギ専務」など、他の地域に販売している人気コンテンツもあります。
訪問されるには
本州と物理的に離れている北海道のトンネルは鉄道専用のため、北海道新幹線を除く訪問手段は航空機もしくは船舶になります。航空機ではLCCなども数多く運航されており、各空港付近には相当数のレンタカー事業者が拠点を構えています。いわゆる乗り捨ても可能なため、道内では随所で「わ」ナンバーのレンタカーを高頻度で目にします。
自家用車ごと乗船できるフェリーは、「大洗-苫小牧」「新潟-小樽」などの航路があります。荷物を運ぶ大型トラックなども、フェリーに乗船しています。
道内在住者は、出張や里帰りなどの際の主要都市間の移動に丘珠空港などからの近距離航空便のほか、相対的に割安な高速バスも利用しています。例えば「札幌-根室」の夜間高速バスですと、22:00に札幌を経って直行で7時間半くらいの距離です。
道内の道路は歩道側に雪を寄せる冬季に備えて総じて車幅が広く、長い直線距離を運転していると否応なしに雄大さを感じます。季節や時間帯などによっては走行車両も少なく快適ですが、冬季以外では随所でスピード違反の取締りを行っているためご注意ください。
道全体が観光地のような一面があるため、魅力的な地域にはこと欠きませんが、函館(朝市など)・ススキノ(歓楽街)・小樽(寿司・海鮮)などでは、一部に法外な値段を請求する悪質な店舗などもみられる模様です。念のためご注意ください。