「家賃並みの返済額で大丈夫ですよ」という言葉に要注意

「住宅ローン」というと、ここ最近では日本銀行が金融政策のスタンスを変更したことによって、「いよいよ変動金利型住宅ローンの金利が上昇するのではないか」という話題で盛り上がっています。

日銀による無担保コール翌日物の誘導目標引き上げは、銀行が優良企業向けの短期融資に適用する短期プライムレートの上昇を促し、さらに短期プライムレートを参考にして適用金利を見直している変動金利型住宅ローンの融資利率に影響を及ぼします。

しかも、変動金利型住宅ローンの場合、これから新規で借り入れる人向けの融資利率だけでなく、現在、変動金利型で住宅ローンを借り入れている人の融資利率にも影響を及ぼします。

とはいえ、金利は上がったり、下がったりを繰り返すので、今のような金利上昇局面に差し掛かったところで、必要以上に「住宅ローンの返済負担が重くなる、大変だ」などと大慌てする必要はありません。

これからしばらく、金利上昇によって返済負担が重くなったとしても、時間が経って金利が低下に向かえば、逆に返済負担は軽くなります。長期の返済期間中、金利は上下を繰り返すため、結果的に金利は中立要因だと考えても良いでしょう。

ただ、唯一の懸念は、これまで変動金利型住宅ローンの融資利率が低かったことで、分不相応なローンを組んでしまっているケースです。

たとえば「変動金利で融資利率は実質年0.33%。月々、家賃並みの返済額でマンションが買えます」という、不動産会社の営業担当者が言った言葉を真に受けて、「確かに、月12万円の家賃を払い続けても自分のものになるわけではないし、同じ月12万円のローンなら、思い切ってマンションを買ってしまおう」という思考が一番危険だと思います。

もちろん、月12万円をローンで払ってもまだ月々の収入に余裕があれば多少、金利が上昇したとしても、あまり問題にはなりません。

でも、月収が手取り25万円で、その半分を住宅ローンの返済に充てている状態だと、どうでしょうか。

たとえば年0.33%の融資利率で3000万円を借り入れ、20年で返済する場合、月々の返済額は12万9187円ですが、仮に今後、日銀が政策金利を複数回にわたって引き上げ、住宅ローン金利が1%程度上昇すると、毎月の返済額は14万2430円になります。結構、厳しいと思いませんか。

住宅ローンの返済シミュレーションを、変動金利型で行うのは、固定金利型に比べてはるかに融資利率が低いからです。低い融資利率をベースにして返済事例を示せば、それを見た人たちは「ひょっとしたら自分でもマンションを買えるのではないか」という気持ちにさせられます。

そして当然のことですが、そのシミュレーションには、今後の金利上昇による影響は加味されていません。大事なのは、マンション購入の契約書に印鑑を押させることですし、そもそも今後の金利動向を読むことは難しいので、説明すらしないのです。

このように、「ひょっとしたら自分でもマンションを買えるのではないか」という気持ちにさせるための住宅ローンのワナは、変動金利型住宅ローンだけではありません。「ペアローン」や「返済期間50年の住宅ローン」も、そのひとつです。