<前編のあらすじ>

不仲だった義母が病気で亡くなった実名子(41歳)は、悲しみもそこそこに正直なところホッとしていた。

遺品整理をするなかで、実名子は義母の日記を見つけた。読んでみると、そこには義母が実名子との関係構築に悩んでいたことがつづられていた。厳しく怒っていたのは実名子を嫌っていたからではなく、家族として大切に思うからこその態度だったことを義母が亡くなってから初めて知る。

実名子は自分を恥じて涙をこぼした。義母の墓前で謝罪し、最後の日記に書かれていた「実名子さんと果たすことができそうにない約束」が何なのかを明らかにすることを決心した。

●前編:「こんなにも口うるさい人がいるのか」不仲だった義母の死…遺品の日記につづられていた「意外すぎる義母の真意」

 

遺品整理に没頭

墓参りから家に帰ると、リビングにいた利喜が声をかけてきた。

「どこ行ってたんだ?」

「お義母(かあ)さんのお墓参り」

利喜は目を丸くする。利喜も実名子と春江の仲がうまくいってないことを知っている。というか間近で見ていたし、2人のあいだで板挟みになりながら、愚痴を聞き続けていた。

「な、なんで……?」

「遺品整理するから、そのことを伝えておこうと思ってね」

「そうなのか。まあ、それは大事だよな」

実名子は軽くうなずいて、また春江の部屋へと向かう。開けた押し入れの中は上下の2段に分かれていて、上には布団が置いてある。下の段には段ボールや小物が置いてあったので、まずはこちらから手をつけることにした。