インフレ時代の投資戦略④ イノベーションはあらゆる分野で発生する

そうした状況のなかで、成功する企業は広範囲にわたるイノベーションに力を入れていきます。広範囲と書いたのは、イノベーションは何も新商品開発に限った話ではないからです。新たな販路や仕入れ先を生み出し拡大していくこともイノベーションです。人材の発掘、開発もイノベーションです。インフレの時代にはあらゆる分野で供給の制約(わかりやすくいえば価格の上昇です)が発生していきますから、これに対抗するためのイノベーション活動が活発になります。

イノベーションという抽象的な言葉を使うと難解な印象をお持ちになったかもしれませんが、実のところインフレ時代には、こうしたイノベーションの例はデフレの時代よりも多く簡単に見つかるはずです。これまでのように決算書や四季報にばかり頼らずとも、ふだんのくらしのなかや、新しい出会いの場所で様々なイノベーションと遭遇していくはずです。ちょっとした変化に目と耳を研ぎ澄ましておいてください。

ただインフレの時代には、淘汰が起こります。供給に障害が生まれてくる会社(人材が集まらない、減っていく、思うように仕入れができなくなる、金利が上昇する、家賃など諸費用が上昇する等、数え上げればきりがありません)は存続の危機に直面します。しかしその会社が〝資産〟を保有しているならば、直ちに買い手が集まるのもインフレ時代の特徴です。つまりは〝資産〟として価値を持つものはすべてが流動化していく時代に向かうのです。

世代交代も加速するでしょう。経営刷新も進むでしょう。すべての価格に正の価値が付けられ、歯車が噛み合って回り出したのですからもう後戻りはできません。

野生の経済学で読み解く 投資の最適解

 

著書 岡崎良介
出版社 日本実業出版社
定価 1,870円(税込)