地域の人々の「役に立つ」ことが行員のやりがいに、ひいては銀行の未来につながる

――地域を支える金融機関として、より地元の皆さんの役に立っていると感じることが、支店全体の士気も上げたのですね。そういった社会的ニーズに応える御行の取り組みは大変すばらしいですが、実際に業績に結び付けるのはなかなか難しいように感じます。

山本 当行では2021年度に人事評価制度を改定し、OKR(Objectives and Key Results)の考え方を取り入れた評価制度を採用しています。この制度では、役職員一人ひとりが社会へのインパクトを与える存在であると自覚を持ち、中期経営計画で目指すビジョンや地域課題の解決に向けた取り組みや自身の夢と連動した目標を考えて設定し、その目標達成に向けた活動を評価する仕組みになっています。例えば「地域の金融リテラシーを向上させる」という「O(目的)」を掲げ、その成果指標となる「KR」として「お客さま向けのセミナーを年度内に何回やる」などと具体的に設定するわけです。地域の子供たちやお客さまに資産形成の意識を広く伝えることで、将来的な豊かな暮らしのお手伝いをしていることや、活動を通じて地域の皆さまに影響を与えられているということなどが行員のやりがいにつながると考えています。確かに、すぐ業績に結び付くものではないかもしれませんが、長期的な視点で考えれば、当行の業績向上にもつながっていくはずです。

――地域全体の幸福度や豊かさの向上が、将来的に静岡銀行の業績向上にもつながるということですね。そういった活動には、外部の協力もあるのでしょうか。

長堀 先にも述べましたが、コモンズ投信など外部の専門家の協力を得ることもあります。皆さん資産運用のプロですから、そういった知見を金融経済教育の場で提供してもらったりしています。また、現在「社内ベンチャー制度」を通じて進行している企画では、地域の企業とタッグを組んで地域の子供たちに金融経済教育ができないか、ということも考えています。一例を挙げると、県内のチョコレート工房と連携して、カカオの仕入れからチョコレート販売までを体験してもらい、チョコレートづくりを通じて経済の仕組みを学ぶといった取り組みを現在検討中です。

――地域の企業や経済にも触れて、子供たちにとっては大変貴重な体験になりそうです。

長堀 経済や金融の仕組みを知り、リテラシーを高めることは子供たちの未来のために必要ですし、長いスパンではありますが、静岡県経済が発展し続ける上でも個人の資産形成はとても重要なことです。地域とともに成長していく企業として金融経済教育に取り組むことは、収益を獲得するだけではない私たちの義務だと考えています。静岡県経済のため、われわれの大切なお客さまの未来を守るため、やりがいをもって活動を続けています。

――静岡銀行のような姿勢や取り組みをする企業がこれからの地域経済には必要不可欠と感じました。今後の取り組みについても、注目させていただきます。本日はありがとうございました。