<前編のあらすじ>

千帆(38歳)は、職場にやってきた中途採用の花林(26歳)の指導を任されることになった。しかし花林は、社内のルールに無駄が多い、非効率な仕事はしたくないなど、歯に衣着せぬ物言いでしばしば場を凍り付かせる。「私ってサバサバしてるから、何でも思ったことを口にしちゃうんですよね」というのが花林の決まり文句でもあった。

そんな花林は営業部のエースであり、社内でも人気の高い作田(28歳)に気があるようで、自分の歓迎会ということで飲み会を設定し、作田を呼ぶようにと千帆たちに要求するが……。

●前編:「私ってサバサバしてるから」職場に現れた“自サバ女”に周囲はあ然…人事も見抜けなかった驚異の「鈍感力」

 

堂々と仕事をサボる「自サバ女」

飲み会が無事に決定し、花林のお望み通り、作田の参加も決まった。

それから花林は機嫌良さそうに仕事をしているのだが、教育係の千帆としては、気がかりなことがあった。

千帆が屋上にある休憩所に行くと、そこにはベンチでコーヒーを飲む花林の姿があった。

「やっぱり、ここにいた」

「あら、どうかしたんですか?」

「まだ休憩時間じゃないわよ。どうして勝手に休憩なんてしているの?」

花林はとにかく仕事をサボるのだ。

何度注意しても直らない。今日もその注意をするために、休憩所に来たのだが、当の本人に反省の色は全くない。

「全員が一斉に休憩をするなんて非効率ですよ。それぞれのタイミングで休憩したらいいと思うんですけど」

「だとしても、会社の決まりがあるから……」

「会社の決まりが間違っているって思わないんですか?」

千帆はため息をつく。

「……それで、この間、お願いしたフライヤーのデザイン案、提出が今日までだけど、ちゃんとやったの?」

千帆の質問に花林は少し間を置いて答えた。

「……あれ、今日でしたっけ? 来週って聞いてましたけど?」

「そんなわけないでしょ。ちゃんと今日までって言ったはずよ」

花林はしばし思案したような顔をする。それから当てつけのようにため息をついた。

「じゃあ、今日中に仕上げますよ」

「え、ええ。まあ、間に合えば何でもいいけど……」

「健介くんなら、そんな嫌みな言い方はしないと思いますけどね~」

花林はそう言い残すと、イライラした足取りでオフィスに戻っていった。

飲み会が決定してから、花林の作田に対するアプローチは熱を帯びるようになった。今では下の名前で呼ぶようになっている。とはいえ、作田は全く相手にしていないように千帆には見えていた。

作田にはご熱心だが、仕事はとにかく不真面目。

これから先もずっと花林と一緒に仕事をし続けないといけないのかと思うと、暗たんとした気持ちになった。