確定拠出年金(DC)専用の投資信託の残高は、2023年3月末で10兆4,603億円と10兆円を超えました。2018年3月末の同数値は4兆9,110億円なので、5年で2倍以上に増えていることがわかります。このように、DC専用の投資信託残高は、順調に積み上がってきています。

資産残高の増加とともに、運用見直しのニーズも高まっているようです。特に、日経平均株価が3万円を超えるなどの環境変化を受けて、確定拠出年金のコールセンターでは運用商品変更への問い合わせや実際の運用変更指示が増えています。

DCの運用商品変更は制限が少ないのが特徴!?

運用商品変更についての質問で多いのは、回数制限の有無や手数料です。回答としては、「回数制限はありませんし、商品変更自体の手数料も不要」となります(※)。

また、企業型DCの場合は、会社での手続きが必要なのか?等を気にされる方もいらっしゃいますが、それも不要です。逆に、事業主(=会社)が個々の加入者の運用状況を把握してはいけない仕組みになっています。

※投資信託の購入時には販売手数料がかかる場合があるが、DCでは販売手数料がかからないことが一般的。ただし、運用商品によってはスイッチングの際に費用が発生する場合もある(信託財産留保額が設定されている投資信託は、所定の信託財産留保額が差し引かれた金額で次の運用商品を購入。解約控除がかかる保険商品を保有している場合も、解約控除後の資金額で次の運用商品を購入)

「商品別配分変更」と「スイッチング」はどう違う?

運用商品変更には2種類の方法があります。

一つは毎月の掛金の配分割合を変更(商品別配分変更)すること、もう一つが積み立てられた資産の一部(もしくは全部)の運用商品を売却して、異なる運用商品を買い直すこと(スイッチング)です。

まず、DCでの運用商品の選択方法を見てみましょう。DC口座に資産が入る時は、運用商品は「配分指定」に従って購入されますが、配分指定は運用商品に対して割合(%)で行います。例えば毎月の掛金が5,000円で、国内債券型投資信託(A)と外国株式型投資信託(B)に50%ずつ配分している場合、(A)(B)の投資信託が2,500円ずつ購入されます。

次に、運用結果を見てみましょう。上記の運用商品への配分を1年間続けた場合、6万円の掛金総額について、(A)(B)それぞれ「元金」は3万円ずつです。しかし、投資信託は値段の上下動があるため、1年後の残高は3万円ずつの6万円ではありません。運用結果として(A)3.1万円、(B)4万円になっていたと仮定すると、運用資産7.1万円は、(A)44%、(B)56%と(B)の外国株式型に偏っています。

運用見直しを考えてみましょう。(A)44%、(B)56%の7.1万円を50%ずつの配分に戻すには、ふたつの方法が考えられます。

一つは、商品別配分変更で時間をかけて調整する方法で、毎月の掛金で購入する投資信託を(A)のみに変更し、(A)の割合が50%に近づいたら、再度、商品別配分変更を行います。もう一つはスイッチングを活用します。(B)を4,500円分売却して(A)を購入します。そうすると、(A)(B)ともに3.55万円ずつになります。

なお、投資信託の値段は日々、変動するため、厳密には50%ずつに配分することはできません。