今、資産運用を真剣に考えるべきワケ

多くの日本人は、戦後初めて資産運用について真剣に考えなければならないタイミングに直面しています。

高度経済成長期は確かに高インフレでしたが、それ以上に個人の所得水準が上昇し、かつ預貯金金利も高かったため、働いて稼いだお金を預貯金にしておくだけでも、ある程度、物価高を吸収できたのです。

80年代のバブル経済は、物価水準以上に地価や株価などの資産価格が上昇の一途をたどりましたし、そもそも世の中全体の景気がよかったため、資産運用をしなくても人並みの生活ができました。

そしてバブル経済が崩壊した90年代は、物価が下落し続けるデフレ経済が長期化したこともあり、それこそ現金を握っているだけで現金価値が上がるという状態でした。しかも、物価が下落し続けるデフレや、物価が上昇しても極めて低い上昇率に止まる低インフレが、つい最近まで続きました。

このように考えると、私たち日本人は、戦後本格的な資産運用に取り組まなくても、インフレで通貨価値が大幅に下落し、生活の質が落ちるという経験をせずにいられたのです。

しかし、これから先は分かりません。

「2020年基準 消費者物価指数」(令和5年4月21日)を見ると、消費者物価指数の前年同月比上昇は、「生鮮所得品を除く総合」で見ると、2023年1月の4.2%をピークにして、2月の3.1%、3月の3.1%というように、やや鈍化したかのように見えますが、「生鮮食品及びエネルギーを除く総合」は1981年12月以来の上昇率となっています。

そもそも生鮮食品は希少状況によって、エネルギーは国際情勢・政治問題によって、それぞれイレギュラーな値動きをする傾向が強いのです。

そのため、消費者の実感に近い物価を見る時は、それらの値動きを除いた「生鮮食品及びエネルギーを除く総合」が目安になるのですが、その上昇率が近年における過去最高を更新しているところからすると、インフレが私たちの生活水準を、徐々に抑圧しつつあるようにも見えてきます。

デフレ経済・低インフレ経済から、インフレ経済へのシフトが確実視され、同時に人口減少によって経済成長が期待しにくいなかで、個人が資産価値を維持しようとするならば、インフレ率を上回るリターンで資産を運用する必要があります。そういう事態に直面しているからこそ、私たちは今こそ本格的に資産運用を考える必要があるのです。