逆に「投資怖い=現金化」一択は正しいのか

いっぽうで、「投資=悪」という認識をお持ちの方も多いのが実情です。

そうすると、相続で引き継いだ株式等は、「現金化する一択!」になりがちです。果たして、それが最善策なのでしょうか?

証券にまつわる仕事をしている仲間からこんな話を聞きました。それは、相続人の方が現金化するのは自由だが、被相続人の方が、どんな気持ちでどんな目的で投資をしたのか、遺していたのかが引き継げないのが残念だというのです。投資活動は人により目的は様々でしょう。単に「お金を増やす」という目的の場合もありますが、そこに様々な気持ちが加味されることもあります。

ある方は、自分の老後資金を増やすために資産運用を始めたが、思ったよりも運用成績が良かった。自分の老後資金は十分となったが、このまま運用は継続し、今度は子どもたちの老後資金の為に、資産運用を続けてお金を遺してあげようと思った、と言います。

またある方は、自分は会社をリタイアしたがこれからは社会に貢献していきたい。A社は自分の仕事に対しての理念とかぶる会社なのでぜひ応援したい。A社株式の購入資金は余裕資金で購入したので、A社が更に成長するまでは株式を保有し続きたい――そんな熱い想いで投資をされる方もいるそうです。

このような思いを相続人に伝えておかないと、投資をした方のA社への想いは閉ざされてしまいます。相続というのは、単に「資産の移動」ではなく、「想いを引き継ぐ継承」ということを忘れないで頂きたいと思います。

●監修:田中久登(バリューアドバイザース)