大学1年で出会った立花隆の「勉強術」

今回のテーマは、門外漢だった私が企業年金の運用をどのように勉強したのか、ということですが、振り返ってみると新聞記者という職種自体、あらゆる取材テーマに関して「門外漢」なわけです。

多くの一般紙の場合、最初に配属された地方支局で警察取材からスタートします。事件・事故の発生から、容疑者の逮捕、起訴、そして裁判。警察や検察の専門用語や司法手続きなど、相当突っ込んだ内容を専門書や六法全書を斜めに読みながら、怖い刑事やダンマリ検事に恐る恐る話を聞かなければなりません。「そんなことも知らないで記者をやっているのか」と罵倒されながらです。「にわか専門家」の極致です。

そんなつらい時代に思い出したのが、大学1年生の時に読んだ1つの記事でした。ジャーナリストでノンフィクション作家だった立花隆さん(2021年逝去)が、『法学セミナー』という雑誌で大学の新入生向けに専門分野の勉強の仕方を開陳したものです。

立花さんは『田中角栄研究』を書いて首相退陣のきっかけを作り、その後も『脳死』や『宇宙からの帰還』といった専門的で深い内容の著作で知られています。

その立花さんが、難しいテーマや専門家と対峙する際のノウハウを以下のように披露していました。

 ■まず、そのテーマやジャンルについての入門書を3冊探して読む

 ■同じテーマでも著者によって切り口や内容が異なるので、
  3冊読み終わると全体の構造が何となく見えてくる

 ■そうすると、本格的な専門書の選び方や読み方が分かるようになる

――という趣旨だったと記憶しています。

新聞記者時代の私は、最初の警察担当を離れて市役所や県庁も取材。経済部に移ってからも多くの分野を担当しましたが、そのたびに、「立花隆の流儀」を踏襲しました。