都心に大量にオフィスが供給される「2023年問題」

企業の倒産件数とオフィスの空室率は、基本的に相関関係があると考えられます。企業倒産が増えればオフィス需要が後退するからです。

では、ここ最近の動向はどうなのかというと、倒産件数は極めて低水準です。アベノミクスによる異次元金融緩和によって株価が急上昇し、景気回復期待が強まった2013年時点でも、企業の倒産件数は1万855件でした。それが減少傾向を続けて、2021年のそれは6030件。2022年は若干増えたとはいえ、それでも6428件ですから、倒産件数は極めて少ないと考えられます。

このように、倒産件数が極めて少ないにも関わらず、オフィスの空室率が上昇しているのは、言うまでもなく別の要因があるからです。2022年中の空室率は、8月と9月が6.49%まで上昇した後、11月にかけて6.38%まで低下しましたが、12月には6.47%まで上昇しています。ちなみに過去、この平均空室率が最も高かったのは、リーマンショック直後の2010年7月につけた9.17%です。

空室率が上昇しているのは、誰もが想像できると思いますが、リモートワークの影響です。新型コロナウイルスの感染拡大でリモートワークが普及した結果、オフィス需要が後退しました。

とはいえ、一方でオフィスに人が戻ってきているのも事実です。新型コロナウイルスのダウングレードが現実味を帯び、世の中はウイルスと共存する方向に進んでいます。2020年から2021年にかけてのような、厳しい出社制限は見られなくなってきました。そこから考えれば、徐々に空室率は低下へと向かうのではないかとも考えられますが、2023年は大きな問題があります。

それは不動産の「2023年問題」です。1月13日付、日本経済新聞の記事によると、「23年は都心5区で約46万坪の新規供給が予定される」ということです。2023年には、「虎ノ門・麻布台プロジェクト」、「虎ノ門ヒルズステーションタワー」、「東京三田再開発プロジェクト・オフィスタワー」、「渋谷駅桜丘地区市街地再開発事業」など、大規模オフィスを備えた再開発事業の竣工が相次ぎます。つまりオフィスが大量に供給されるのです。そのなかで需要が盛り上がらなければ、オフィス賃料は一段と低下傾向をたどる恐れがあります。

さらに問題になるのが「二次空室」です。新しく竣工したオフィスビルの空室を埋めるため、古いオフィスビルに入っているテナントを、フリーレント(家賃無料期間)付で誘致したものの、そのテナントが抜けた後の古いオフィスビルに別のテナントが入らず、空室のままになってしまうリスクがあります。空室からは家賃が取れないだけでなく、入居してもらうために家賃の引き下げを行いますから、オフィスビルの収益性が落ち込んでしまいます。