新NISAと引き換えに、確実視される金融所得課税の強化
しかし、これを額面通りには受け止めない方が良いでしょう。「いちいちNISA口座をつくるなんて面倒だ」と言って、これまで一般NISAやつみたてNISAの口座を開かなかった人も結構いらっしゃると思いますが、新NISAばかりは真剣に口座開設を検討しなければならないかも知れません。
というのも、1800万円の非課税枠が個々人に認められた後に、今度は「金融所得課税の強化」が議論の俎上に乗せられる可能性があるからです。
金融所得課税の強化は、そもそも岸田首相が就任と同時に言い出した結果、今の低支持率の元凶にもなった話です。
もっとも金融所得課税の強化については、以前から財務省内部では議論されていたようで、岸田首相が発案したわけではないようですが、それを国民の前で明言したことで、特にマーケット関係者を中心にして強い拒否反応が示されました。ウクライナ紛争や急激なインフレ、それにともなう長期金利の上昇なども株価の下げ要因にはなりましたが、岸田政権が誕生した2021年10月4日以降、株価は大きく値を下げ、2022年3月9日の日経平均株価は、2万4681円まで下落しました。
菅政権の時代、支持率こそ30%前後まで低迷したものの、日経平均株価は3万円台まで上昇したことからすれば、岸田政権が金融所得課税の強化を持ち出したことで、いかにマーケットから嫌われたかが分かります。
その金融所得課税強化を、再び議論の俎上に乗せてくる可能性があります。現在のところ、預貯金の利息、株式の配当金ならびに特定口座を用いた場合の値上がり益、投資信託の分配金と値上がり益に対する税率は、東日本大震災の復興特別所得税を含めて20.315%となっていますが、その税率を引き上げるというものです。
もちろん、これが議論の俎上に乗せられた時には、さまざまな反対意見が出てくるでしょう。そもそもNISAの制度改正を行い、2024年から1800万円まで枠を広げたのに、一方で金融所得課税を強化したのでは、全く意味がないという意見は、当然のことながら出てくるものと思われます。