ガソリンを25円安くする「トリガー条項」とは

ガソリンの税金については「トリガー条項」がよく話題に上ります。ガソリン価格が160円を3カ月連続して超えた際、上乗せされたガソリン税を停止させる仕組みです。トリガー条項は、民主党政権時の2010年度税制改正で盛り込まれました。

現在、1リットルあたりのガソリン税は「租税特別措置法」によって本来の税率より25.1円分上乗せされています。つまり、トリガー条項が発動すればガソリン価格が1リットルあたり25円ほど安くなることが期待できるのです。

【1リットルあたりのガソリン税】

出所:財務省 自動車関係諸税・エネルギー関係諸税に関する資料

しかし、トリガー条項は発動の目途が立っていません。東日本大震災の発生を受けて成立した「震災特例法」により、トリガー条項が凍結されているためです。

【租税特別措置法第88条の8「揮発油税及び地方揮発油税の税率の特例」(一部抜粋)】
……揮発油税及び地方揮発油税の税額は……当分の間、揮発油一キロリットルにつき、揮発油税にあつては四万八千六百円の税率により計算した金額とし、地方揮発油税にあつては五千二百円の税率により計算した金額とする。

【租税特別措置法第89条「揮発油価格高騰時における揮発油税及び地方揮発油税の税率の特例規定の適用停止」(一部抜粋)】
前条の規定の適用がある場合において、……連続する三月における各月の揮発油の平均小売価格がいずれも一リットルにつき百六十円を超えることとなつたときは、……揮発油税及び地方揮発油税については、同条の規定の適用を停止する。

【震災特例法第44条「揮発油価格高騰時における揮発油税及び地方揮発油税の税率の特例規定の適用停止措置の停止」(抜粋)】
租税特別措置法第八十九条の規定は、東日本大震災の復旧及び復興の状況等を勘案し別に法律で定める日までの間、その適用を停止する。

出所:e-Gov法令検索 租税特別措置法、東日本大震災の被災者等に係る国税関係法律の臨時特例に関する法律より

トリガー条項については昨年2月、岸田首相が凍結解除に言及したことから注目を集めました。しかし、重油や灯油が対象に含まれないこと、ガソリンスタンドの負担が大きいことなどが問題視され、トリガー条項の凍結解除には至っていません。

執筆/若山卓也(わかやまFPサービス)

証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。