株価下落は割高調整の見方もできる

しかし、ここで視点をやや変えてみると、2021年まで米国株式市場はかなり高く買われすぎていたともいえます。

特にナスダック市場は、なぜここまで強いのかというほど、急速な上がり方をしました。いわゆるグロース株が買われたわけですが、グロース株ほど利益成長が高く見込まれます。

そもそも株価算定は、将来の利益を金利を使った割引率で割り戻して、現在の株価を見積もるため、分母の金利が上がると、将来の利益が大きくなるグロース株の株価ほど、下落率が大きくなるのです。これが、ナスダック指数の下落率が他の指数に比べて、高い背景です。見方を変えれば、グロース株の株価は上下の変動が大きく、戻すときは大きく戻します。

米国市場は、上がるときには「ここまで上がるのか」と感じるほど上がりますが、下がるときもまさに情け容赦なく下がる、残酷な(cruel)市場です。このような動きを前向きにとらえると、米国市場は活力に富み、株価形成が自然であると見ることができるわけです。

FRBと日銀の決定的な違いも浮き彫りになった2022年

また、中央銀行であるFRBが市場に遠慮することなく、まさに徹底的にインフレ撲滅に邁進するという姿勢は、一面では、信頼できる管理者ともいえます。しかも、これだけインフレが進むということは、景気が過熱したともいえ、それだけ米国経済の強さの証ともいえるのです。

●S&P500(配当込み)

筆者作成 ※2017年末~2022年12月15日

このあたりを日本の中央銀行、日本銀行と比較すると、大変面白い対比となります。金利を果敢に上げる米国FRB。一方、10年の国債金利をかたくなに0.25%以下に抑え続けてきた日銀(年の暮れ、12月20日になって金融政策の修正が発表されましたが……)。

これは、非常に活力ある米国経済と停滞感が強い日本経済の構図にほかなりません。この彼我の開きは、かなり大きいといってよいでしょう。まさに日本の国力の衰えをはっきりと感じざるを得ません。