人生100年時代――充実した老後のためには老後資金計画など“準備”も欠かせませんが、年齢を重ねるなかで、はつらつと過ごせる体とマインドを維持することも同じくらい重要です。

では、どうしたら、はつらつと年齢を重ねることができるのか?30年以上にわたって高齢者専用の精神科医として、医療現場に携わってきた和田秀樹氏は、70代が「ターニングポイント」だと指摘。70代を無事乗り越えることができれば、元気な80代を迎えられると言います。ただ、裏を返せば、70代には注意すべき危険が潜んでいることを意味します。

そんな70代を乗り越えるための「習慣」と「心がけ」についてのアドバイスがまとめたれた話題の書籍『70代で死ぬ人、80代でも元気な人』から、第1章の一部を特別に公開します(全3回)。

第2回を読む

※本稿は和田秀樹著『70代で死ぬ人、80代でも元気な人』(マガジンハウス新書)の一部を再編集したものです。

若いころのようにはいかないことを、逆に面白がる

これは仕方のないことですが、70代になれば、体力も集中力もそれなりに衰えてきます。

「昔はこれくらいの作業なら1時間でできたのに」「一日中、本を読んでも集中できたのに」など、50代、60代のころまでならできたことが思うようにいかなくなってきます。

すぐに疲れてひと休みしたくなる、集中できなくて眠くなったり頭に入ってこなくなる。その程度のことならほとんどの70代が自覚していると思います。

でもそこで、「もう好きな本を読むなんてできないんだな」と考えるとどうなるでしょうか? 「体力を使うことはムリだな」と諦めたらどうなるでしょうか?

その時点で、テレビの前に座り込んでしまう、無気力な70代の仲間入りです。

少しぐらい体力が落ちても、時間をかければできないことはありません。体力が半分に落ちたのなら、倍の時間をかければできる計算です。そこで「やってられないな」と考えるのではなく、「面白いな」と考えてみてはいかがでしょう。

実際、面白いのです。

あんなにテキパキできたことがゆっくりしかできない。そのかわり、のろのろやってみると「そうか、こういう仕組みだったのか」とか「この作業がポイントだったのか」と気がつくことが出てきます。

以前だったら、おそらく休みたいと思っても「これくらい一気にやらなくちゃ」と頑張り続けたのでしょう。つまり若いころというのは、何をやる場合でも楽しんだり面白がったりする余裕がない。「時間」や「効率」にどうしてもこだわってしまうからです。

高齢になれば違います。

体力が落ちた、集中力も記憶力も落ちたとなると、これはもうできないことを面白がるしかないのです。

本を読んでいても「あれ、ここは昨日読んだページじゃないか」といったことがよくあります。「まあ、面白いから何回読んでもいいか」「昨日は読んでも頭に入らなかったけど今日は入るな」などと思い直せば、何か新しい発見をしたり、いままでとは違う読み方ができるかもしれません。

そういう面白さに気がつけば、たとえ時間がかかるようになってもとにかく読みたい本を最後まで読み通すことができます。少なくとも「一気に読めないから止めよう」とはならないはずです。

できなくなったことを面白がるというのは、やりたいことをやり続けるためのコツなのです。