家計の消費はコロナ前の水準に戻りつつある
最近、冬が近づいてくるのと共に、「第8波」に対する懸念が強まっているようですが、少なくともこの夏から秋にかけては、新型コロナウイルス感染拡大に対する警戒感が解けて、人々の生活は徐々に戻ってきた感があります。
実際、電車の混雑ぶりはコロナ前を彷彿とさせますし、夜の街を歩いていても、かなり人が戻ってきた感があります。知人がある観光地に1泊したところ、宿の方にこう言われたそうです。
「皆さんはラッキーでした。来週から外国人のお客様で予約が一杯なんですよ」。
インバウンドも結構動き始めています。最近、取材先で聞いた話では、下北沢や浅草などの下町に行ったところ、飲食店にいたお客さんの3分の2が外国人観光客で占められているところもあったとか。
まだまだ街を歩いていると、マスクをしている人が大部分を占めていますが、果たして人々の消費行動は、コロナ禍にあった2020年6月時点と、それがほぼ明けた2022年6月と比べた時、果たしてどの程度変わってきたのでしょうか。人々の行動変容をデータで見せてくれるのが、月刊資本市場の2022年10月号(No.446)に掲載された、ニッセイ基礎研究所生活経済部上席研究員である久我尚子氏のレポートです。
まず、2020年を100とした総消費動向指数を見ると、緊急事態宣言が発令されて厳しい行動自粛を強いられた2020年4-6月期は、実質値で94.7まで落ち込みました。同年7-9月期は99.9まで若干の回復。そして行動制限がほぼ解除されて、人々が自由に移動するようになった2022年4-6月期には、104.1まで上昇しています。
このレポートにも書かれているように、「総消費動向指数」はGDP統計の家計最終消費支出に相当します。なお、コロナ前だった2019年は106.4なので、2022年4-6月期の数字は、コロナ前にかなり近い水準まで回復してきたことが分かります。
このレポートで興味深いのは、コロナ禍前の2020年1月頃と比べて、消費行動がどのように変わったのかを、半年おきに変化を示した数字が見られることです。この推移を見ると、コロナ禍によって消費行動が変わったものの、ウイズコロナになったことで元に戻ったもの、戻らないもの、あるいはコロナ前も後も変わらないものが見えてきます。