損をしたくない人向けのDCにおける商品選びとは?

ここからは、DCで初めて運用を経験する方を対象に、どんな商品を選ぶと良いのか、私なりの考え方をお話ししたいと思います。

DC制度がスタートしてから、およそ20年が経過しました。どのDCのガイドブックを見ても、株式と債券を組み合わせたバランス型をモデルプランとして勧めているケースが目につきますが、それは完全にミスリードだと思っています。

そもそもDCを始める人は、社会人になりたての20代の方が多いはずです。この人たちには、これからおよそ40年もの運用期間があります。40年以上も時間があるなら、100%全世界株で運用すべきだと私は考えます。

投資先進国の米国において、DCで成功している人たちの多くが、若いうちは株式100%で投資をしています。株式はリスクが高いと言ってバランス型に誘導しようとしているのは、日本特有の現象に思えます。

50年程度の長いスパンで見ると、世界株のインデックスのリターンは円ベースで7%前後。当然、下がることもありますが、ドルコスト平均法で下がったときには多くの口数を買うことができますから、次の上昇時に大きなリターンを得られます。しかし、下落するリスクを過度に恐れるあまり、バランス型などに誘導してしまうと、そうしたリターンを取り逃がしてしまうのです。

運用の世界では、複利の考え方がとても重要になります。リターンが1%違うだけで、40年後に得られる成果に圧倒的な差が出てしまいます。だからこそ、DC業界全体としても、バランス型を全面に打ち出すのでなく、真っ向から100%全世界株で投資しようと謳うべきでしょう。

私を含むバブル世代はその後のバブル崩壊の経験から、「株式は損するもの」という感覚をもつ人が多いのかもしれません。しかし、今のZ世代には、「株は上がるもの」と考える人が増えているように思います。彼らが物心ついたころから、世界の株価は上昇基調にあるからです。

もしこの仮説が正しいなら、今のバランス型「推し」は完全に間違った誘導をしていることになります。このことをぜひ肝に銘じていただき、特に若い方は100%全世界株で運用することをお勧めします。

「米国株だけに投資をすればいい」との風潮は正しいか

一方で、最近は若い投資家を中心に、米国株だけに投資をすればいい、中でもS&P500だけに投資をすればいいという意見が目立っているようです。

しかし、過去のマーケットの動きを見てみると、米国株だけではせっかくの投資機会を逃してしまう場合も多いと思います。米国株だけでいいという偏った考えを持っている方は、ここ20年ほどのマーケットしか見ていないのかもしれません。現にもっと長いスパンで米国株式市場を見てみると、例えば1966年から1982年の17年間は「株式の死」と言われた時代であり、株価が全く高値を更新できない期間でした。

その後、米国株は長期の上昇に入りますが、一方で1980年代には日本株の時代もあり、さらにITバブルが崩壊した後の2000年代には新興国ブームも起きました。また2010年代に入ると日本株はアベノミクスで再び息を吹き返し、日経平均株価も一時3万円の大台を回復する中で、米国株に引けを取らないパフォーマンスを上げる銘柄も出てきています。

つまり、米国株も結局は全世界株の一部に過ぎませんから、全世界株に投資し続けることで、米国株以外の成長も享受できるというわけです。特定の国や特定の分野の銘柄に賭ける投資手法は、超長期の投資では機会を取り逃がすことが多く、リスクが大きいという点を、ぜひ理解しておいてほしいと思います。