コロナ禍の影響で世界中に波及したエネルギー危機により、LNGの価格が高騰を見せている。2020年の平均価格が3.8ドルであったのに対して、2022年8月には61ドルとわずか2年間で20倍もの値上がりとなった。

これ程までに急激な値上がりをした背景には、どのような要因があるのだろうか。この記事では現在のLNGを取り巻く状況について、知っておくべき情報を解説していく。

ニーズが高まるクリーンエネルギー「LNG」

まずはLNGの基本情報を簡単に解説する。LNG(Liquefied Natural Gas)は天然ガスを冷却して液状にしたものだ。日本語では「液化天然ガス」と呼ばれる。同じ化石燃料である石油や石炭と比べて、二酸化炭素の発生量が少ない天然ガスは、クリーンなエネルギーとして注目を集める資源だ。日本では火力発電に用いられる燃料で、2021年には国内全体の発電電力量の31.7%がLNGによるものとなっている。

埋蔵量が豊富な点も、天然ガスの普及が進む一因だ。2020年時点のデータでは、全世界に約188兆立方メートルが埋蔵されており、約49年にわたって発掘が可能という試算が発表されている。(※1)また、石油のように資源埋蔵量のほとんどが中東などの限られた地域に集中しているのではなく、世界の広い地域で産出が可能であることもポイントだ。

(※1)エネ百科『原子力・エネルギー図面集』「世界のエネルギー資源確認埋蔵量」

揮発性が高く、常温では気体となる天然ガスだが、−162℃まで冷やして液化させると体積が約600分の1にまで縮小される。そのため、国内外への輸送や保存が格段に容易になるのだ。