資産形成に最も必要な「金融・経済の基礎」の知識が不足

このように、若年層の投資経験、あるいは投資に対する関心度合いが高まるのは良いこととして、問題は金融リテラシーがしっかり定着しているのかどうかという点です。なかには投資に関する最低限の知識を持たず、ただ儲かるかも知れないからという程度の理由で投資を実行し、大損を被ってしまうケースもあります。

そもそも投資に損をするリスクはつきものであり、それを理解したうえで、いかにしてリスクをコントロールするかが、長期的な資産形成を行うには重要なのですが、何の知識も持たずに投資をして、大きな損をすると、「もう絶対に投資をしない」という気持ちになる人が少なくありません。

金融リテラシー調査には、8つの「金融リテラシーマップ」が設けられています。これは、最低限身につけるべき金融リテラシーを年齢層別に、体系的かつ具体的に記したものです。

それぞれの年齢層において身につけておくべきリテラシーとして、「家計管理」、「生活設計」、そのうち金融知識として「金融取引の基本」、「金融・経済の基礎」、「保険」、「ローン・クレジット」、「資産形成」 の5分野、そして「外部知見の活用」、「金融教育のニーズ・経験」の計8分野について、「金融知力・判断力」に関する正誤問題が25問設定されており、その正答率が出ているのですが、過去2回行われた調査における正答率は、それほど大きく変わりません。

ちなみに2016年が55.6%、2019年が56.6%、そして2022年が55.7%でした。2019年に比べてやや下がってはいますが、ほぼ横ばいと考えて良いでしょう。

年齢層別の正当率は、

18-29歳・・・・・・41.2%
30代・・・・・・48.8%
40代・・・・・・53.0%
50代・・・・・・58.6%
60代・・・・・・64.1%
70代・・・・・・65.6%

このように年齢層が高くなるほど、正答率も上昇します。金融リテラシーは「年の功」というわけではないと思いますが、やはりある程度の経験値がものを言うのは事実のようです。正当率全体の平均値が55.7%で、18~29歳の正当率は、それを14.5%も下回っています。

前述したように、「金融知識」に関する十分な知識を持たないまま、投資に対する興味だけで投資をするのは、危険です。そんな状態で投資をして大損した人が増えると、「投資は大損する危険なもの」という間違った認識が、世の中全体に拡散するかも知れないからです。

実際、この正誤問題で、金融知識に含まれている5つの分野のうち、最も正当率が低いのは「金融・経済の基礎」でした。投資などで資産形成を行うに際して、最も必要とされる知識のリテラシーが、最も低いのです。

だからこそ、金融教育が必要だと言われているのですが、それを家庭科の授業で学ばなくても、ほんのわずかな出費で「金融・経済の基礎」に関するリテラシーを高める方法があります。