〈前編のあらすじ〉

木下萌さん(仮名、25歳)は大学時代に物理の研究をしていた“リケジョ”。就活に失敗して希望の職種に就けず、年収250万円程度の事務職で何とか生計を立てていました。

そんな彼女に重くのしかかっていたのが奨学金350万円の返済。家計を切り詰めてコツコツ返済していたものの、この2年間はコロナ禍の影響で残業手当やボーナスが大幅ダウン。いよいよ生活が困窮し、自宅で鬱々と過ごすように……。

そんなとき、たまたまネットで見たニュース記事でとある独立系FP(ファイナンシャルプランナー)の存在を知り、迷った末に思い切って連絡。するとすぐに返信があり――。

●返信を読んだ木下さんは思わず涙。その内容とは… 前編を読む>>

10年後の自分を考える余裕がない

独立系FPの上田さんのオフィスを初めて訪れたのは1年前の6月。当時の私は、コロナ禍の収入減で預貯金も底を突き、奨学金を返済するどころか、ワンルームマンションの家賃を払うのがやっとという状態でした。

よほど私の顔色が悪かったのでしょう。「木下さん、ちゃんと食事をしてますか?」というのが、上田さんの第一声でした。プロフィールによると当時40歳を超えていたはずですが、鍛えた体つきにくしゃくしゃっとした笑顔が素敵な上田さんからは、「こんなお兄さんがいたらいいな」というような相手を和ませる温かさが感じられました。一方で、慣れない場面でおどおどする私をリードし、持参した家計簿や通帳、会社の福利厚生などの資料に目を通しながら、確認すべきポイントをてきぱきと押さえていく様子は、さすがプロだなと思いました。

ひと通り確認作業を終えた上で上田さんが発した問いかけが、「木下さんは10年後、どんな自分になっていたいと思いますか?」というものでした。私にすれば思いも寄らない質問です。日々の生活に追われ、10年後の自分を考える余裕など全くなかったからです。

「お金に困らない暮らしをしていたい」「可能なら、大学での研究を生かした仕事に就きたい」。頭に浮かんだ言葉をそのまま伝えると、上田さんは大きくうなずき、「それなら、10年よりもっと早く、木下さんの願いがかなうようなお手伝いをしましょう」と力強く言ってくれました。