離婚時の年金分割とは?
ほとんどの方がきちんと理解していない離婚時の年金分割。言葉のイメージで、相手の老後の年金から、ざっくり2分の1分けてもらえるという“皮算用”で、「それならば離婚してもなんとかなるかも」と勘違いしている方も少なくありません。
まず分割の対象となるのは婚姻期間中に築いた厚生年金または共済年金の記録です。記録が相手に移植された後、もともとの本人の年金記録と合算されて65歳以降の老齢年金額が計算されます。
年金分割は、「合意分割」と「3号分割」の2種類があります。前者は平成19年4月1日以降の離婚が対象で、夫婦の合意により分割割合いを定めて年金記録を分割します。後者は平成20年5月1日以降の離婚が対象で、同年4月1日以降の3号被保険者期間対して請求により対象期間の記録を2分の1ずつ分割する制度です。こちらには合意は不要です。いずれも請求期限は離婚から2年を経過していないことという決まりがあります。
合意分割は、共働きの夫婦がそれぞれの年金記録をいったんテーブルの上に出し合って大きな山を作り、それを二人でどう分けるかを決めるイメージです。これまでの協力に感謝をしつつ、2分の1ずつ記録を分けてもいいですし、それぞれの働きに応じた年金なのだからと分割を不問にするという合意に至っても問題ありません。
一方3号分割は、扶養の専業主婦(夫)という特殊な立場に対する厚生年金の独特の解釈となります。すなわち夫(妻)が会社員として働いてこられたのは内助の功があってこそなので、法律で定められた婚姻期間中の年金記録については当然半分は扶養の配偶者のものであるとされ、請求によって記録が配偶者に移植されるのです。
例えば対象となる婚姻期間13年間で、夫が平均的に給与45万円で働いたとすれば、3号だった妻は平均給与22.5万円で13年間働いたという記録の分割を受けるのです。老齢厚生年金額は、平均収入×5.481/1000×厚生年金加入月数でおおよその計算ができますので、この場合対象期間に相当する夫の老齢厚生年金約39万円のうち19.5万円の記録が妻に移ります。
分割された年金は妻が65歳になると妻自身の老齢年金とともに受給できるようになります。この年金は分割により妻自身のものになっているので、離婚後に元夫が亡くなっても金額が減ることはありませんし、妻自身の希望で繰上げや繰下げも可能です。
離婚時の年金分割に必要な情報は、申請により事前に手に入れることができます。50歳以上の場合は、分割実行後の年金見込み額も提示してもらえます。