「お金の健康診断」を通じて気付いた大きな問題
顧客にとって最適な営業担当者と出会ってもらうために、中村氏が「どういう人なら営業担当者として信頼するか?」というユーザーインタビューを行ったところ、残念ながら「これといった明確な基準は得られなかった」という。このため「お金の健康診断」では、セミナー、動画、口コミ、顔写真、直接の声がけなど、出会いの場面を数多く作ることで、顧客自身に一番気に入ったアドバイザーを選んでもらう仕組みを構築した。この仕組みが評判を呼んで、現在では数多くの顧客に支持されている。
しかし、この「お金の健康診断」を通じて、中村氏は大きな問題に気付いたという。それは、IFAなどの営業担当者がどうしても富裕層の顧客を中心にアプローチするため、結果的に、マス層の顧客には誰も金融のアドバイスを行っていなかったことだ。「一般的には、証券会社においても富裕層を中心とする三角形の頂点の方だけを対象として、この層だけに手厚いサービス提供を行っています。言い換えると、みんながこのゾーンで戦う『レッドオーシャンの戦い』になっていると感じています」。
本来であれば、金融資産1000万円未満の人でも金融の悩みは尽きないはず。しかし、そこにアドバイスが行き届いていないというのが、中村氏の問題意識であるわけだ。「楽天証券やSBI証券などネット証券のデータによると、せっかくNISA口座を申し込んでも、稼働しているのは60%にとどまっているそうです。つまり残りの40%のお客さまは口座開設したのに、何のアクションも取っていません。自らが口座を作って申し込むネット証券であってもこの状態であれば、他の販売会社はその比率がもっと高いのではないでしょうか。別に高度なアドバイスが必要なわけではありません。ただお客さまの背中を押してあげるという、『行動ファイナンスにおけるナッジ理論的なもの』でも十分だと思います」。