人は恋に落ちると「相手の良いところ」しか見えなくなってしまうものです。実は最近、そんな恋心を利用する「ロマンス詐欺」が増えているので要注意。

婚活アプリやマッチングサイトなどを使って交際関係となり「2人で大きなチャンスをつかもう」などと言って、投資話を持ちかけてくるのです。

今回はそんなロマンス詐欺にはまってしまった佐伯さん(仮名 29歳女性)の体験談をもとにロマンス詐欺の恐ろしい実態をのぞいてみましょう。

佐伯さん(29歳女性)のケース

佐伯さんは29歳の会社員。「そろそろ一生をともに過ごせるパートナーを見つけたい」とは思いつつも、コロナ禍もあって出会いがまったくない生活が続いていました。

ある日、何の気なしにスマホを眺めていると、婚活アプリが目に飛び込んできました。少し前までは婚活アプリと言えば危険なイメージもありましたが、ここ数年はアプリを使って婚活している人も多いという話は耳にしていました。「もしかして良い出会いもあるかも」と思い、軽い気持ちで登録。

もちろんすぐには良い男性は見つかりませんでしたが、数ヶ月使っていると見た目もタイプで気も合いそうな男性(T氏)と知り合うことに。メッセージのやり取りをするうちにすっかり意気投合して「会おう」という話になりました。

デートをすると、ますます好印象を持ち、2人は結婚を前提に交際を開始。佐伯さんは「運命の人だ」「あの時アプリを使って本当に良かった!」と幸せいっぱいでした。

幸せな日々の中、突然持ち出された投資話

ある日、デート中にT氏は佐伯さんに「君は特別だから教えるんだけど」と切り出し、「今、日本ではあまり知られていないけれど、実はものすごく儲かる仮想通貨があるんだ。海外では多くの人が投資しているよ」と言ってきました。

「僕もやっているから一緒にやってみない?最初は少額でいいと思うよ!」と言って、スマホの画面も見せてくれました。佐伯さんは「Tさんもやっているなら」と10万円をT氏に言われた投資会社の口座に振り込み、投資。すると1ヶ月後には何と5000円(リターン率5%)も増えてびっくり。

佐伯さんは「Tさんには投資の才能もあるなんてすごい! 結婚するならもうこの人しかいない」と感激し、ますます夢中になっていたところ、T氏は「今後はもっと思い切って投資してみない? 先日の配当率だと、500万円投資したら25万円増える計算になるよ」と連絡してきました。

佐伯さんは500万円も持っていなかったので、さすがに断ろうとするとT氏は「残念だな……君と一緒にチャンスをつかみたかったのに」と少し悲しそうな表情に。佐伯さんは「機嫌悪くさせちゃったかな?どうしよう」と心配になり、「どうしたらいいかな?」と相談。

するとT氏は以下のように説明しました。

「そうだね。親族に借りたりカードローンを使ったりする人もいるみたい。確かにリスクはあるけど実際には儲かっているから、返済に困ったりはしていないよ」

「もちろん無理にとは言わないから。もしよかったら“そういう方法もある”ってことだよ」

「君と一緒にチャンスをつかめたら僕も幸せだし、早めに結婚したいからどっちにしても準備も進めようね!」

音信不通に…そして借金だけが残った

佐伯さんは「T氏と結婚したい」という想いもあり、「投資で一緒にチャンスをつかみたい」という言葉が心に突き刺さったため、結婚資金として貯めてきた200万円の貯金をはたき、銀行カードローンとクレジットカードで300万円借金、合計500万円を用意して、またもT氏が指定する投資会社の口座へお金を振り込みました。

その後、500万円の状況がどうなったか知りたくてT氏に連絡をとろうとしたところ、「いきなり結果は出ないから、しばらく待ってて」と言われ、デートに誘っても「今日は会えない」と断られる日が増えていきました。

振り込み後1ヶ月くらいが経過した頃、ついに音信不通に。電話もつながらず、LINEも未読スルー。

佐伯さんが焦って友人や親に相談すると「詐欺じゃないの?」と言われ、投資会社の連絡先を当たりましたが該当なし。どうやら架空会社のようでした。

佐伯さんは合計510万円をだまし取られて、300万円の借金だけが残ってしまいました……。