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「中途半端は許されない」不退転の覚悟で挑むリテール分野への新たなるチャレンジ case of 三菱UFJフィナンシャル・グループ

Ma-Do編集部
Ma-Do編集部
2025.12.03
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「中途半端は許されない」不退転の覚悟で挑むリテール分野への新たなるチャレンジ case of 三菱UFJフィナンシャル・グループ

国内トップバンクグループである三菱UFJフィナンシャル・グループが、5月にリテールビジネス戦略を発表した。 戦略の基盤であるライフステージ総合金融サービス「エムット」を中心に、デジタルとリアルの両面からアプローチすることで リテールの新天地を拓く。その中枢を担う三菱UFJ銀行の山下 邦裕執行役員の話をもとに、進化する同グループに迫る。 取材・文/金融ジャーナリスト 浪川 攻

三菱UFJフィナンシャル・グループ(以下、MUFG)がデジタル技術を駆使する新たなリテールビジネス戦略の全貌を明らかにしたのは今年5月27日だった。国内6000万人の顧客基盤を誇り、個人預金残高は90兆円台に達する国内トップバンクグルーブが描く近未来型のリテールビジネスモデルである。当然ながら、金融関係者のみならず、多くの関心が集まった。

満を持して登場の「エムット」と金融サービスの自前主義という戦略

金融分野に限らないが、デジタル化の要はモバイル端末とそこに搭載するアプリケーションにほかならない。MUFGが打ち出した戦略の中核も「エムット」のリリースと同時にリニューアルした、「三菱UFJ銀行アプリ」である。従来版のインターネットバンキング、「三菱UFJ銀行アプリ」を「資産総合管理アプリ」へと進化させ、クレジットカード、ロボアド、ネット証券、Visaプリペイドカード、QR決済といった他のサービスへのワンストップアクセスが可能な仕様へと劇的に仕上げた。

「エムット」は、「つかう」、「ためる」、「ふやす」、「つなぐ」という、おカネに関する顧客の人生のあらゆるシーンをサポートするプラットフォームである。そのために、各種の金融サービス、非金融サービスを内包する。その基本的な設計思想について、山下邦裕・執行役員リテール・デジタル企画部長はこう説明する。

三菱UFJ 銀行 リテール・デジタル企画部
執行役員 部長 山下 邦裕氏

「コアとなる金融サービスはわれわれが責任をもって提供し続けるため、ジョイントベンチャーや提携という方式はとらず、自社ブランド方式としています。そして、お客さまの利得性を徹底して追求する。そのためにも、お客さまにわかりやすい体験、メッセージ、ブランディングをグループで共通させて徹底的に最大の価値をお届けします」

プラットフォーマーモデルには自前主義からの脱却的な側面があると言えるが、あえてコアコンテンツである金融サービスには自前主義を貫徹するという。そう考えると、近年、ネット証券やロボアドのウェルスナビを子会社化した戦略の意図も見えてくる。

その奥深さについては後述したい。ここではまず、新戦略を構築するまでの経緯を振り返ってみる。というのも、MUFGの本気度を推し量ることができるからである。

MUFGグループのカバレッジ強化の構成イメージ

 

後れを取ってきたリテール分野、LTV導入に見える徹底路線への転換

トップバンクグループであるMUFGが近年、ライバルグループに後れを取ってきたのがリテール分野だった。具体的に言えば、三井住友フィナンシャルグループが持ち前のスピード感をもって、店舗、デジタル化等々、リテール分野の各領域で先頭を切って走り続けている。そのような状況もあって、MUFGはリテール分野の戦略思考の刷新とも言える議論を重ねていた。2023年春にかけてのことである。マネジメントレベルでリテールビジネスのあり方を根本的に議論し尽くしたのだ。

経営環境的にも「金利の復活」という言葉で象徴されるような変化のときが訪れた。それ以前は「金利のない世界」の長期化によって、リテール業務は不採算とすら言える局面に立たされ続けて、コスト削減が優先される領域と化していたが、その前提が大きく変わり始めた。環境的にも戦略の見直しの必要性が迫っていた。

「中途半端なものは許されない」

マネジメントレベルは緊張感の伴う議論を繰り広げた。極論すれば、「やめるか、それとも、徹底的にやるか」という二者択一に近い議論である。結果として導き出された結論は「徹底路線」だった。

しかも、これは単なる理念、精神論にとどまらなかった。新たな戦略を徹底的に展開していくためにリテール業務の特性を踏まえた布石が打たれたからだ。ひとつは、短期的な収益評価に陥らないための新たなKPIの導入である。評価軸を長いスパンでとらえるために、顧客との50 ~ 60年間という長期的な関係に基づくLTV(ライフタイムバリュー・生涯提供価値)の概念を取り入れた。銀行業界では初の試みだが、それだけではない。コスト先行が際立つリテールビジネスの特性を踏まえて、短期的な収益にとらわれず中長期的な収益向上に向けて資源を投下する「基盤投資枠」を設定した。

MUFGが新たなリテール戦略に向けて不退転の覚悟を固めたことがうかがえる出来事と言っていい。このコミットメントに立脚して、専担部門が取り組んだのがグループ内でのコア機能の提供と外部事業者との提携というプラットフォーム、つまり、エムットモデルの構築だった。その基本構造の構築工程を完了し、今年10月、新たなフェーズが始まった。

18カ月間で3サービスを実現、デジタルバンクで口座の土管化を解消

現在の中期経営計画の期限である2026年度末をゴールとする18カ月間において、どのような取り組みが進むのか。山下氏は「とにかく、進化していくことが大切です」と前置きして、次のように語る。

「サービスラインアップとしては、デジタルバンク、デジタルの相続プラットフォーム、アフルエント(準富裕層)向けコンテンツの3サービスを実現し、それらを支える基盤として、共通ID、共通ポイント、そして、ロイヤリティプログラムを創設します」

サービスメニューの充実化と顧客利便性などの基盤づくりを同時進行させる上下構造の二正面作戦と言える。まず、サービスラインアップのメニューからみると、2026年後半の開業を目指すデジタルバンクは既存のネット専業銀行とは機能的な違いがある。リアルの店舗網や専門家たちのアドバイスも利用できるデジタルとリアルの統合モデルだからだ。ちなみに、近年、銀行の預金口座を巡って、個人顧客の間では口座の複数開設という動きが広がっている。

「統計的にみると、過去20年で一人当たりの平均口座保有数は3.2から4.1に増えたが、これは貯蓄、送金、消費など用途別に口座開設して使い分けるようになっているためです」と山下氏は指摘する。そうしたなかで、伝統的な銀行口座は、給与振り込み口座のようにコア口座ではあるものの、そこから用途別に他のネット銀行などの口座へと資金が移し替えられる傾向が起きている。いわゆる、おカネが通過していくという意味での預金口座の「土管化」現象だ。

この点、デジタルバンクは三菱UFJ銀行の既存口座との一体的な運営となるため、スイッチング操作の手間を要せずにリアル、デジタルの口座間で用途別の使い分けができるようになる。利用者が用途別に別の銀行の複数口座を利用する必要性は消える。銀行は預金口座の土管化を食い止めることきができるわけである。

一方、デジタルの相続プラットフォームは高齢化社会ならではの社会ニーズに対して、従来、三菱UFJ信託銀行を中心にして対面、リアルで提供してきた各種サービスをデジタルベースに置き替えて、より多くの人たちに活用してもらうことを目指す。そのなかで同プラットフォームでは新たな施策として「相続で資産を譲り受ける相続人世代へのアクセス」を強化する。「親子間など被相続人・相続人の間であらかじめIDを紐づけて、いざという際にはスムーズに資産継承できる体験を提供したい」と山下氏は説明する。これも預金口座の土管化を食い止めることになるに違いないが、それだけではない。

三菱UFJフィナンシャル・グループ(以下、MUFG)がデジタル技術を駆使する新たなリテールビジネス戦略の全貌を明らかにしたのは今年5月27日だった。国内6000万人の顧客基盤を誇り、個人預金残高は90兆円台に達する国内トップバンクグルーブが描く近未来型のリテールビジネスモデルである。当然ながら、金融関係者のみならず、多くの関心が集まった。

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