――最初に、これまでの世界経済とマーケットの動きを振り返っていただけますか。
コロナ禍によって世界経済の状況は一変しました。欧米を中心としたロックダウンと財政拡大政策は、経済活動の再開時にサプライチェーンの混乱と強いペントアップ需要をもたらし、財とサービスの需給バランスが大きく崩れました。さらにウクライナ危機によって、エネルギーをはじめ商品価格が跳ね上がりました。この間、FRBもECBも物価上昇の持続性を読み誤り、インフレ率の上昇を一時的なものと捉えて金融引き締め策に転じるタイミングを逃しました。
その遅れを取り戻すために、米国では過去40年間で最も急激な金融引き締めを実施せざるを得なくなり、インフレ高進への警戒感に乏しかった投資家に大きなショックを与えることになりました。低金利が続く中で運用リスクを高めていった投資家にも、中央銀行にも慢心があったのだと思います。特に債券投資家にとっては、2022年は大幅に金利が上昇し、スプレッドも拡大する極めて厳しい1年となりました。