――2023年のドル円相場は、どのような展開を予想されていますか。
私はかねて円安が再進行するのではないかとの懸念を抱いており、140円台への復帰があってもおかしくはないと見ていました。米国のインフレは根強く、早期の利下げが想定できないことと、そもそも日本経済の構造が変化していることがその理由です。
これまでドル円相場を語る時に、専門家の多くは日米金利差の拡大と縮小だけを根拠にする風潮が強く、確かにそれは最も説明力がありました。しかし現状は、それだけでは語れなくなっていると感じています。
インフレの鎮静化に躍起になる中銀の動向と経済指標の発表に一喜一憂する展開が続き、それに加えて、3月以降米国、欧州の金融機関が破綻や経営危機に陥るなど、2023年も市場には不透明感が拭えない。こうした世界経済の動向は、国内金融政策の舵取りをいっそう困難にしているだろう。日本にもインフレ圧力がかかり、金融緩和策の副作用にも懸念が高まっているが、海外で景気後退局面が迫る中で金融緩和を継続するか修正するのか、日銀新総裁がどう動くのかに世界からも関心が寄せられている。そこでこのシリーズでは、経済・為替、金利、アセットマネジメントそれぞれの分野で著名な専門家が考える、今後の見通しや注目ポイントを紹介していく。
第1回はみずほ銀行チーフマーケット・エコノミストの唐鎌大輔氏に話を聞いた(取材日:2023年4月10日)。
――2023年のドル円相場は、どのような展開を予想されていますか。
私はかねて円安が再進行するのではないかとの懸念を抱いており、140円台への復帰があってもおかしくはないと見ていました。米国のインフレは根強く、早期の利下げが想定できないことと、そもそも日本経済の構造が変化していることがその理由です。
これまでドル円相場を語る時に、専門家の多くは日米金利差の拡大と縮小だけを根拠にする風潮が強く、確かにそれは最も説明力がありました。しかし現状は、それだけでは語れなくなっていると感じています。