――新NISAで中心になるのは、「eMAXIS Slim」シリーズということですか?
ネット証券やネット銀行などオンライン販売向けの主力商品は「eMAXIS Slim」シリーズに代表される低コストのインデックスファンドですが、窓販などの対面販売では、インデックスファンドは「つみたてんとう」シリーズですし、債券に投資するファンドも含めて様々なラインナップが考えられると思います。
マザーファンドを同じくするインデックスファンドで「eMAXIS Slim」と「つみたてんとう」では信託報酬率が異なりますが、「eMAXIS Slim」は自己判断で投資をし、とことん投資コストにこだわる比較的リテラシーの高い方がネットを通じて購入されるファンドですので、目論見書や月次レポートなどは全てPDFで提供し、印刷物はありません。
これに対し、「つみたてんとう」シリーズは、店頭で販売員の方々から説明を聞いて納得した上で購入していただく商品として、お客様に手渡す目論見書や販売用の資料も用意しています。また、運用報告など購入後のサポートについても販売会社を通じて、個々のお客様に必要なサービスが提供されることになります。「つみたてんとう」シリーズの信託報酬率が「eMAXIS Slim」シリーズと比較して高いのは、販売後のサポートも含めたトータルでのサポートに関わるコストが付加されているためです。
お客様の中には、ネット取引には抵抗があり、窓口で相談して納得のいく投資をしたいと考える方々も少なくありません。また、窓口で販売員の方々がお客様とコミュニケーションをとることによって、これまでは意識してこなかった投資へのニーズが出てくるということもあります。このような対面窓口を通じた投信販売には、依然として大きな成長が期待できると考えています。
――投信のネット販売は伸びていますが、窓販は停滞しているように感じます。窓販の復調のポイントは?
投信の販売については、これまではスポット(一括購入)が重視されてきた傾向が強かったように思います。それが、つみたて投資の普及によって、毎月購入することによる時間分散の効果についての理解が進み、リスクとの付き合い方について一歩進んだ考え方になってきていると思います。
また、1998年12月に銀行による投信窓販が始まってからは、「グローバル・ソブリン・オープン」をはじめとした毎月決算型の投信がけん引役となって、銀行での投信販売額が証券会社の販売額を上回るほどに銀行窓販が大きく伸びました。しかし、毎月の分配金のみが強調されるようになってしまい、投資商品としてのリスクに対して十分な説明が行き届かないなどの問題が指摘されるようになってしまいました。その結果、毎月決算型投信は資産形成には向かない商品として、新NISAでも対象商品から排除される存在になっています。しかし、投資ニーズの1つとして配当や分配金といったインカム収益を求めている方も少なからずいらっしゃると思います。インカムゲインとキャピタルゲイン(売買差損益)を合わせた「トータルリターン」という考え方とリスク管理についての考え方の普及ということが、投信市場の課題の1つだと思っています。
この課題については、つみたて投資の普及が解決策の1つになると思います。非課税でつみたて投資が実践できる新NISAが、窓販の課題の1つを解決するきっかけになるのではないかと期待しています。私どもは「つみたてんとう」シリーズの一層の普及によって、つみたて投資の拡大をサポートしていきたいと考えています。
――新NISAに向けた新商品の開発は?
コアのプロダクトとしては、つみたて投資の普及を支えるパッシブファンドがベースになると考えています。現在の売れ筋は、「S&P500」と「全世界株式(オール・カントリー)」ですが、ここから次のステップとしてどのようなパッシブファンドがあり得るのかを考えています。「NASDAQ100」、「全米株式」など候補となるインデックスについて検討しています。投資家、販売会社からのニーズも踏まえ、必要に応じて速やかに新商品を投入する計画です。
「成長投資枠」については、既存のファンドの中で、成長投資枠の条件に合ったファンドの洗い出しを進めている段階です。中長期の資産形成に応えるという点が1つの判断ポイントです。また、「成長投資枠」の場合は、リタイヤメント層に多い「取り崩しのニーズ」も含めて多様な投資ニーズを意識しています。
たとえば、リーマン・ショック以降に世界的な低金利が続いたことで債券の利回りはほとんど期待できなくなった結果、エクイティ投資へのニーズに傾斜しましたが、近年の利上げによって再び債券投資へのニーズが高まっています。新NISAの投資対象商品としても債券ファンドは可能性があると思います。エクイティ商品に加えて債券の商品が加わることで、投資ポートフォリオを安定させるという使い方もできると思います。