相談者のプロフィールとお金データ

【江口健人さん(仮名)プロフィール】 埼玉県在住の48歳、教育系の団体職員。都内の大学に進学後、就職、結婚して埼玉県郊外にマンションを購入、家族(妻42歳、長女15歳、長男12歳)と4人で暮らしている。
【江口 実さん(仮名、健人さんの父親)プロフィール】 福岡県在住の75歳無職。妻(70歳)と2人暮らし。退職後から株式運用を始め、優待や配当を楽しみに積極的に投資している。
【寄せられたお悩み】 「相談したいのは離れて暮らす実家の父親のことです。両親とも高齢で、最近、『父親に認知症のような症状が出始めてきた』と母親から電話を受けたのです。父親は株式投資が趣味で、口座には多額の資産があるようです。もし父親が認知症だった場合、進行度合いによっては口座凍結もあると知り、驚きました。すぐにでも両親と資産について話し、できれば管理を任せてもらいたいと思っていますが、具体的にはどうすれば良いでしょうか」
【お悩みの論点】 ①認知症の症状が出始めた父親が持っている財産の詳細を確認したい ②口座凍結される前に、子供が親の財産を管理できる方法・手続きを知りたい

資産状況や月々の収支内訳

【父親の資産状況】 金融資産額:4000万円
内訳 預貯金:2500万円 投資信託:1000万円(バランス型、米国REIT型、外国債券型の計3本) 株式:500万円
【一か月の収支】 <収入> ・毎月の手取り額:25万円 ※年金、株式配当金含む。母親の話によると、毎月20万円くらいの生活費で暮らせているとのことで、当面の心配はなさそう。 ・手取りの世帯年収:300万円 <支出> ・毎月の支出:20万円

口座凍結される前に、「代理人登録制度」の活用を

現状ではご両親は毎月の収入の範囲内で生活できており、金融資産もある程度お持ちとのことですから当面は心配なさそうですね。ところが、認知症などの症状が出てくると話は変わってきます。

金融機関の口座は、口座名義人が認知症等で判断能力を失うと凍結され、お金の出し入れができなくなります。判断能力を失った人が自由に入出金や金融商品を取引できてしまうと、詐欺や悪徳商法などのトラブルに巻き込まれる可能性があるためです。

金融機関での取引は口座名義人本人が行うことになっています。また高齢や病気、ケガなどで本人が窓口に出向くのが困難という場合には、多くの金融機関では本人が作成した「委任状」を持参すれば代理人による預金の引き出しなどにも対応しています。ただしこの委任状による代理行為は、本人に判断能力があることが前提となります。そして都度、委任状を作成するのも負担が重いことでしょう。そこでお勧めしたいのが各金融機関で行っている「代理人登録制度」です。

代理人登録制度とは、外出が困難などの理由がある口座名義人に代わって、あらかじめ登録した代理人が手続きを行える制度です。銀行、証券会社、保険会社などでこのような登録制度を行っているところがあるので、あらかじめ制度の有無や利用方法の詳細を確認しておきましょう。

例えば証券会社の中には、親の保有する証券口座で子どもを代理人登録しておくと、残高や取引内容の確認、書類の代筆のほか、株式の売買注文や現金の入出金なども行うことができるところもあり、高齢の親に代わって基本的な資産の管理や運用を行えます。

ただし、認知症や判断能力を失った人の代理行為はできないため、この制度を利用できるかどうかはお父様の症状次第となります。また無事に代理人登録ができた後も、代理人取引を継続するかどうか、定期的に口座名義人に意思確認が行われます。そのため認知症発症後もずっと代理行為が認められるわけではないと考えておく方がよいでしょう。