新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、今年2月から3月にかけて、世界的に株式相場が大きく下落したのは記憶に新しい。6月15日時点では、ほぼコロナショック前の水準にまで戻っているものの、急落で肝を冷やした個人投資家も少なくなかったはずだ。

では、投資信託をはじめとする金融商品の販売現場である銀行や証券会社などでは、どんな状況だったのか。資産運用ビジネスに携わるプロフェッショナル向けの情報誌『Ma-Do(マ・ドゥ)』が、銀行や証券会社、IFA(Independent Financial Advisor:独立系ファイナンシャルアドバイザー)などを対象に実施したアンケート(4月下旬実施、N=104)の結果を元に、その実情を紹介したい。

投信販売額は減少したものの投資家は意外に冷静な反応

アンケートでは、まず「コロナショックによる投信販売への影響」を聞いているが、「投信販売額の減少」が78%でトップ(図1参照)。

2位には「販売現場のモチベーションの低下」が69%で続き、金融のプロであるアドバイザーたちにとっても厳しい状況だったことがうかがえる。3月の投信販売額を前年同月比で聞いた結果も平均52%となり、緊急事態宣言が全国に拡大された4月は、さらに落ち込んでいた可能性が高いだろう。

アンケートには、販売現場の生の声も寄せられている。「顧客との面談機会の減少。新規先への提案が現状不可能となっている」(関東地方の地方銀行)。「交代勤務により、少人数で日々の支店運営を行っているため、営業にまで手が回っていない。渉外係は融資相談の増加により、投信に時間をかけられる状況ではない」(中国地方の第二地方銀行)。

一方で、少数派ながら「投信販売額の増加」が見られたところがある点にも注目したい。

「すでに保有していた商品の多くが値下がりしたため、今後の運用方針についての相談が増える一方、値下がり局面を狙った買いも見られた」(東海地方の地方銀行)。「コロナは金融危機とは違い、状況が収まれば回復するため。在宅勤務で時間ができた人が多いため」(関東地方の証券会社)。「短期的な相場変動を意識する方は、足元の相場は安いと感じているようで、一括投資、積立投資に関係なく購入が増えている」(近畿地方のIFA)。

ここからも分かる通り、今回の状況をむしろ好機と捉えていた投資家は決して少なくなかったが、リーマン・ショックを経験しているかどうかも1つの試金石となったようだ。「リーマン・ショックを経験しているお客さまは、焦っていない様子。リーマン後に投資を始め、利益を出していた方や投資経験が短い方が焦って解約に走っている」(北陸信越地方の地方銀行)。