節約のつもりで通院を控えた母

「お金が足りなくなったわけじゃないんだよね?」

「ええ、生活には困ってないわ。でも、これから先のことを考えると、無駄な出費は減らしたほうがいいでしょう?」

「病院代は無駄な出費じゃないよ。今まで、お薬はどうしてたの?」

「最初は残ってた分を使ってたんだけど、だんだんなくなっちゃって。咳もひどくなってきたけど、もう少し様子を見ようと思って……」

母は最初、ただ次の受診の日程を遅らせるだけのつもりだったという。にもかかわらず、その状況が2カ月近くも続いていたことに、遥花は言葉を失った。

「困ってたなら、どうして相談してくれなかったの?」

「だって、あんたにも生活があるでしょう。やっと子育ても終わったのに、余計な心配をかけたくなかったのよ」

そう言われて遥花は胸が痛んだ。

母は自分なりに考えて行動していたのだろう。だが、医療費を惜しんで健康を損なってしまっては意味がない。

「お母さん、これからは我慢しないで病院に行って。体が一番大事なんだから」

「そうね……まさか、こんなことになるとは思わなかったわ」

「退院したら、一緒にお金のことを確認しようか。医療費の制度のことは、私が調べておくから」

「そうしてもらえると助かるわ。ありがとう、遥花」

母は安心したように笑った。遥花はその表情を見て、ようやく思い出したように持ってきた着替えをベッドサイドの引き出しにしまった。