<前編のあらすじ>
離れて暮らす母・祥子の71歳の誕生日に電話をかけた遥花。昔から呼吸器系の持病がある祥子は何度も苦しそうに咳き込む様子を遥花は心配するものの、「いつもの咳だから」と祥子は言い張る。
10年以上前に父を亡くして以来、1人暮らしの祥子に何かあっても離れて暮らす自分はすぐ異変に気づけないと不安になった遥花は実家を訪問。母は以前より頬がこけ、短い距離を歩くだけでも苦しそうであった。
居間で昔話をしながら穏やかな時間を過ごしたた2人。祥子は立ち上がると激しく咳き込み、その場に崩れ落ちてしまう。母を支えながら、救急車を呼んだ遥花の手は震えていた。
●前編【「大丈夫よ。いつもの咳だから」1人暮らしの71歳母…娘が電話越しに感じた“異変”の正体は】
入院した母から明かされた事実
病院で治療を受けた母は、命に別条はなかったものの、持病が悪化していたため、そのまま入院することになった。いったん実家に帰った遥花は母の容体が気がかりで、落ち着かない夜を過ごした。
「お母さん、具合はどう?」
翌朝、着替えを持って病室を訪れると、母はベッドの上で体を起こしていた。まだ顔色は優れないものの、昨日ほど苦しそうではない。
「だいぶラクになったわ。昨日はごめんなさいね。せっかく来てくれたのに」
「そんなこと気にしなくていいよ。無事でよかった」
普通に会話ができるまでに回復した母を見て、遥花はようやく胸をなでおろした。しかし、今回の発作には少し気になることがある。
「ねえ、お母さん。本当は、前から具合が悪かったんじゃない?」
「まあ、ちょっと咳が出ることはあったけど……」
「病院にはちゃんと通ってたのよね?」
母はすぐには答えず、膝の上に置いた手を見つめた。
「実はね、8月くらいから行くのを控えてたのよ」
「えっ、2カ月も前から? どうして病院に行かなかったの?」
「テレビで見たのよ。医療費の自己負担が増えるって。ずいぶん大変なことみたいに言ってたから、これから病院代が高くなると思って……」
「それって、高額療養費制度? の話だよね? お母さんの場合も高くなるの?」
「それが、よく分からないのよ。説明が難しくてね。ただ、年金暮らしだし、少しでも節約したほうがいいと思ったの」
母は昔から、難しい話が出るとすぐに理解するのを諦めてしまうところがあった。今回も自分にどんな影響があるのか確かめることなく、通院を控えてしまったらしい。
