<前編のあらすじ>

穂香は、義父が脳梗塞で倒れたことをきっかけに、夫・雄一とともに家業を継ぐために地方の義実家へ移住。パソコン作業には慣れていたが穂香だが、日本酒の知識は乏しく、義母・月江に教わりながら仕事を覚えていった。

事務仕事に加えて、店頭対応や地域の付き合い、家の掃除まで抱え込み、穂香は次第に疲弊する。食欲が落ち、夜も十分に眠れない中、仕事では入力漏れや伝票の日付間違いなどのミスが続いた。

さらに、古いデータを使って誤った請求書を取引先へ送る大きなミスをしてしまう。月江や雄一から厳しく注意された穂香は、自分を責め続ける。その夜も食事をほとんど取れず、請求書の失敗が頭から離れないまま朝を迎えた。

●前編【「最近、ミスが多すぎるわよ」夫の家業を手伝う元エンジニア妻…失敗続きで追い詰められた先の“異変”】

無理を重ねた体に現れた異変

その朝、穂香は目を覚ました瞬間から身体の不調を感じていた。頭がずきずきと痛み、布団から起き上がろうとすると目の前がくらむ。それでも仕事に遅れるわけにはいかないと、どうにか着替えを始めた。しかし、洗面所へ向かう途中で足元がふらつき、壁に手をついてしまった。

「穂香、大丈夫か? 顔色が悪いぞ」

雄一が慌てて駆け寄ってきた。

「大丈夫。ちょっと頭が痛いだけ。薬飲んだら店に行くから」

「駄目だ。そんな状態で無理するなよ。今日は休んでくれ」

「でも、今は忙しい時期だし……」

言い終わる前に再びめまいがして、穂香は雄一に支えられながら寝室へ戻った。

その後も体調は改善せず、午後になってから雄一に付き添われて病院を受診した。医師からは疲労や睡眠不足が重なっていると説明され、しばらく休養するよう勧められた。

結局、穂香は数日間、仕事を休むことになった。

「はあ……早く治さないと」

寝室で横になっていると、窓の外から車の出入りする音が聞こえてくる。そのたびに、酒蔵では今も月江と雄一が慌ただしく働いているのだと考えてしまう。自分が担当していた注文確認や出荷管理は、誰が進めているのだろう。2人とも、負担を感じているに違いない。

「どう? 少しは食べられそう?」

昼過ぎに、月江がお粥を運んできてくれた。

「ありがとうございます。仕事任せきりにして、すみません」

「いいのよ。今は体を治すことだけ考えてちょうだい」

月江はそう言って、食器を枕元に置いた。気遣ってくれるのはありがたかったが、以前のように気軽に話すことはできなかった。請求書の失敗を思い出すと、どうしても気まずくなってしまう。