<前編のあらすじ>
2人の子どもを育てながら、派遣社員として働く裕子さん(仮名)。
会社員の夫の年収約900万円と合わせ、世帯年収は約1200万円です。しかし毎月約14万円の住宅ローンに管理費や固定資産税も加わり家計に余裕はありません。それでも「節約していれば何とかなる」という夫の言葉を信じ、教育費の計画を数字で確かめないまま、長男の受験期を迎えてしまいました。
●前編:「節約していれば何とかなるよ」夫の言葉を信じた妻の誤算…世帯年収1200万円でも家計が回らない中学受験の盲点
小6で成績が下降。個別指導に通わせたいけれど
さて、経済的にはなんとか綱渡りではあるもののマネジメントしてきた裕子さん。しかし別の問題が勃発します。息子さんは6年生の春までは頑張った成果を出していたものの、思うように成績が伸びず、6年生の夏休み直後から「持ち偏差値」(直近半年程度の平均偏差値)が急激に下がってしまったのです。
周囲からは、個別指導塾を併用しているという話が聞こえてきます。大手塾に通いながら、わからないところは個別で補う。裕子さんも、その選択肢が頭をよぎります。
「みんなが個別へ行っていると聞くと、それをしていないから成績が下がるのかな、と考えてしまって。でも、お金がない。自分も働いているのに、必要だと思うことをしてあげられないのが、つらかったです」
もちろん個別指導をつければ成績が上がると決まっているわけではありません。それでも、受験までの時間が少なくなるほど、今しかないのに、という気持ちに駆られたそう。
悩んだ末、裕子さんは若い頃にボーナスで買った、唯一のハイブランドの指輪を思い出します。当時はそれぞれ10万円前後で買ったという、たっぷりと地金を使ったゴールドの二つの指輪でした。さっそくブランド品や貴金属を買い取る店に行ったところ、買い取り額は合わせて20万円が提示されました。
「昨今のブランド品の値上げは目を見張るものがあり、手放したらもうこういうハイブランドのものは買えないと思うんです。思い出もあったし、これまで一度も売ろうと思ったことはありません。でもまさに『背に腹は代えられない』という心境。これで個別に行かせられる、と思いました。指輪を持っているより、今、子どものために使えたほうがいい。そう考えたら、手放そうと決められました」
20万円があれば、しかもそのお金が「臨時収入」だと思えば、個別指導塾に投じるハードルが下がると感じたそう。自分の大事な持ち物をお金に換える――そこまでして捻出したお金です。だからこそ、その後に聞いた夫の話を、裕子さんは受け流すことができませんでした。
「部下と一緒に行った飲み会で、恰好をつけて2万円ごちそうしてきたというのです。計画的に、とかイベントで、というわけではなく、ちょっとおだてられて勢いだというからがっかりしてしまって。私は子どもの個別代をどうしようと悩んで、指輪まで売ったんです。それなのにノリで2万円も出せるの? とショックで……。思わずなじってしまい、大喧嘩になりました」
怒りの中心にあったのは、飲み会の金額だけではなかったのでしょう。子どものために何を諦め、どこまで切り詰めるのか。その切実さを、夫婦で共有できていなかったことでした。
