義母が語り始めた事故の原因

しゅんとして黙り込んでいる宙人を見ると、自分が悪かったと反省しているように見えた。

「そうよ。どうしてもって聞かないから仕方なく連れていったのに、全然やりたがらないの。それで手本を見せてあげようとしたら、このありさま」

「申し訳ありません……宙人、おばあちゃんを困らせちゃダメって言ったでしょう」

「ぼく……」

宙人がようやく顔を上げかけた、そのときだった。

「宙人! あんたのせいで大変な目に遭ったんだから!」

知子の鋭い声が病室に響く。

「救急車まで呼ぶことになって、どれだけ怖かったと思ってるの。もうすぐ小学校に上がるっていうのに、わがままばかり言って!」

「お義母さん、本当にすみません。宙人には私からちゃんと話しますから」

そう言って頭を下げつつも、知子の剣幕には戸惑いを覚えた。いくら宙人が悪かったとしても、泣きそうな顔をしている6歳の子を、ここまで責めなくてもいいのではないか。

「今回の治療にかかったお金は払ってもらいますからね」

「え?」

思わず聞き返すと、知子は当然のことのように続けた。

「それにこの腰じゃ、しばらく家のこともまともにできないでしょう。買い物も掃除も困るんだから、あなたに手伝ってもらうわ」

夫は入院中で、宙人の世話もある。ただでさえ余裕のない生活に、さらに知子の世話まで加わることを想像すると、思わず言葉に詰まった。だが、知子のケガの原因を作ったのは宙人で、息子を預けたのは自分だ。知らない顔をするわけにもいかない。

「……分かりました」

知子は当然だというようにうなずいた。廊下を行き交う足音が響く中、恵理はうつむいた息子の小さなつむじを見つめていた。

●夫の入院中、6歳の息子・宙人を預けた義母・知子が負傷し、「宙人のせい」だと聞かされた恵理は、治療費だけでなく義実家の手伝いまで引き受けることに。泣きそうな顔で責められても何も言わなかった宙人だったが…… 後編【「6歳の子の話を信じるの?」ケガを巡り食い違う義母と孫…息子の告白で知ったありえない真相とは】にて、詳細をお伝えします。

※複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。