突然の知らせに動揺する恵理

それからしばらく、恵理は夫と入院費のことを話した。慣れない手続きについて確認し、ようやく用事が一段落する。

「あ、そうだ。梨、食べる?」

「そうだな。そろそろ食べないと悪くなりそうだし」

「じゃあ、むくから待ってね」

恵理が椅子に腰を下ろしたそのとき、軽いノックの音がした。足早に病室へ入ってきた看護師の口から知らされた内容に恵理は思わず息をのんだ。つい先ほど知子が救急車でこの病院へ搬送されてきたという。

「え……お義母さんが?」

どうしてそんなことになったのか。知子の家に預けてきた宙人はどうしているのか。次々と不安が浮かんでくる。短い会話のあと、ベッドの上から動けない夫に代わり、恵理は看護師に続いて病室の出口へと向かった。

 

   ◇

 

白い廊下を歩きながら看護師から受けた説明によると、知子は農園でサツマイモ掘りをしていたときに転倒し、腰を強く打ったらしい。診断は腰部打撲。レントゲンに異常はないため、入院の必要はなく、痛み止めと湿布で様子を見るという。一緒にいた宙人にはケガがないと分かり、恵理はひとまず胸をなで下ろした。

「なんでサツマイモ掘りなんて……」

案内された処置室へ入ると、ベッドには知子が横になっていた。

「ママ……!」

恵理の顔を見るなり、宙人が弾かれたように椅子から立ち上がった。すがりついてくる息子を抱き寄せながら、恵理は知子に声をかけた。

「お義母さん、大丈夫ですか?」

「大丈夫なわけないでしょう。腰が痛くてたまらないわよ」

知子は顔をしかめたまま答えた。恵理は宙人の赤く充血した目をのぞき込んだ。

「宙人、何があったの?」

しかし、宙人はうつむいたまま何も言わない。代わりに知子が口を開いた。

「この子がサツマイモ掘りをしたいって、しつこく言うからよ」

「宙人がですか?」

宙人は外で走り回るより、家で図鑑を眺めたり絵を描いたりしているほうが好きな子だ。

同年代の男の子と比べても聞き分けはいいほうだと思っていたが、ついわがままを言ってしまったのだろうか。