<前編のあらすじ>

68歳の母親と暮らす野上弘幸さん(仮名、40歳)は、17歳でひきこもり、現在は心の病を抱え日常の動作もままならない状態です。

現在は母親の収入で暮らしていますが、今後収入が減り、生活が立ち行かなくなる恐れもあります。そこで母親は生活破たんの危機を乗り越えるため、社会保険労務士である筆者のもとへ相談に訪れます。

●前編:「仕事を辞めると生活が破たんする」17歳でひきこもった40歳息子と暮らす68歳母…限界寸前の生活ですがった“最後の望み”

体調を崩したのは20年以上前…それでも請求は可能?

母親の話を聞く限り、弘幸さんは統合失調症の可能性がありそうです。しかし、統合失調症は障害年金の対象になりますが、それだけでは不十分です。なぜなら、障害年金を受給するためにはいくつかのハードルをクリアする必要があるからです。

そこで筆者は、まず弘幸さんの公的年金の加入状況から確認することにしました。

母親によると、弘幸さんは20歳から現在まで国民年金に加入しており、ずっと納付猶予制度を利用してきたとのこと。公的年金の未納が多すぎるわけではないので、弘幸さんは障害年金の請求権利が発生します。

障害年金では、その障害で初めて病院を受診した日を初診日といいます。初診日は、病院で文書を作成してもらって証明する必要があります。

弘幸さんは今まで精神科や心療内科を受診したことはなかったので、初診日の証明はこれから受診する病院でしてもらうことができます。よって、初診日の証明もクリアできます。

初診日の時点で国民年金に加入していると、障害基礎年金を請求することになります。障害基礎年金には1級と2級があり、仮に2級に該当した場合の金額は次の通りです。

障害基礎年金 7万608円
障害年金生活者支援給付金 5620円
合計 7万6228円
※いずれも2026年度の金額で月額換算

そこまで話が進んだところで、母親は不安を口にしました。

「月に約7万6000円ももらえるのはとても助かります。ですが、長男は17歳頃に体調を崩しました。今から20年以上も前のことなので、当時のことを証明するものは何も残っていません。それでも障害基礎年金は請求できるものなのでしょうか?」

「はい、請求は可能です。障害年金では、発病日(体調を崩した日)を文書で証明することまでは求められていないからです。文書で証明しなければならないのは初診日の方です。ただし……」

と前置きをしたうえで、筆者は説明を続けました。