内容証明を送ることに…

これにはさすがの駿夫さんは驚き、恐怖したという。

無理もない。相続とは、人生でそう何度も当事者になることがないもので、誰もが素人同然で知識を持っていないのが普通だ。

そんな相続において、実の弟から、「家庭裁判所」「訴える」「法的手続き」といった言葉が出ると、普通はそれだけでもとてつもない心理的負担を感じるものだ。
特に法律に詳しくない人の場合、「こっちが正しくても、裁判では負けるのではないか」「面倒なことになるのではないか」と不安になってしまいがちだ。

悩んだ挙句、駿夫さんは、私のところに相談しに来たのだった。

実は、何を隠そう、俊二さんの遺言書の原案は私が作ったものだった。

私は改めて遺言書の内容を確認し、駿夫さんから一連の流れと状況をヒアリングした。

しかし俊二さんが死亡した時点で、敏郎さんの就職という条件は満たされておらず、今後満たされる可能性もない。

加えて、そもそも、俊二さんの子である敏一さん・駿夫さんが存命である以上、孫である敏郎さんへの相続は、遺贈(本来の相続人以外に遺言書で財産を贈与すること)扱いとなる。

遺贈には代襲相続(亡くなった相続人に代わって他の人が相続人となること)は起こりえないので、敏一さんが100万円を相続するのはそもそも無理な話だった。

私はそう整理し、その内容を駿夫さんに説明した。

駿夫さんはその話に安堵し、今後どう対応すべきかを相談した。

私と話し合った結果、駿夫さんの出した結論は「敏一さんに対して内容証明を送り、反対の意を示す」というものだった。