結婚へ向けた同棲の提案

交際期間が1年過ぎ、卓弘は変わらず2人で過ごす時間を楽しいものだと感じていた。しだいに卓弘は、次のステップに進みたいと思うようになり、すると自然に結婚が2人の話題にのぼることも多くなった。

その日もデートから帰っている道中で、卓弘はこれからのことを観月と話し合っていた。

「結婚する前に、一度一緒に住んでみて、お互いのことをより知ったほうがいいと思うんだよね」

観月は視線を落とし、ぎこちない笑みを浮かべた。

「……そうね。うん。一緒に住むってのは大事だよね」

「だろう? 俺が住んでるワンルームは小さいからさ、2人の職場の中間くらいのところに部屋を借りるのはどうかな。1LDKか2LDKくらいで、家賃は折半して住めば安上がりだし」

卓弘が話を進めると、なぜか観月の表情は曇った。

「……それはちょっと無理かも。一緒に住みたいとは思うけど、私は実家を出るつもりはないよ」

「……なんで?」

「おばあちゃん、最近膝が悪くて、1人で買い物に行くのも難しくなってるの」

「でも、1人で何もできないわけじゃないだろ? 買い物なんて別に通販とか宅配とかあるし、どうにかなるだろ」

「そうだけど、転んだりしたら心配だし。急に1人にはできないよ」

観月は珍しく強情だった。卓弘は頭をかいた。